ダイレーションとは?
MtF(男性から女性へ)の方が性別適合手術を受けた場合、造膣する選択をすると必要になるのが「ダイレーション」です。
「ダイレーション」とは、造った膣が狭窄したり閉塞したりしないように奥行きや直径をキープするために必要な作業です。
この作業を怠った場合、せっかく造った膣が使えなくなるばかりか、無用なトラブルを招く恐れがあります。
ダイレーションの方法と頻度は?
ダイレーションの方法と頻度は、手術を受けた医療機関により様々です。
以下は、各医療機関のダイレーション方法と頻度の例をご紹介いたします。より詳しい内容については、渡航後に弊社スタッフよりご案内いたします。
ガモン病院のダイレーション方法と頻度の概要
ガモン病院では、最低でも術後3ヵ月間は1日2回(各1時間ごと)のダイレーションを推奨しています。
専用のダイレーターを使い、最も細い径のダイレーターから、膣を拡張する様にサイズアップしていきます。
ダイレーションの間隔は下表の様になります。
術後からの期間 | ダイレーションの頻度 |
---|---|
術後3ヶ月まで | 1日2回 |
術後4〜6ヶ月 | 1日1-2回 |
術後6〜12ヶ月 | 1日1回程度 |
術後1年後以降 | 週に2〜3回 |
※各ダイレーションの間隔は均等に時間を空ける(1日2回なら12時間ごと)事をお勧めしています。
スポーンクリニックのダイレーション方法と頻度の概要
スポーンテクニックでは手術時点で、患者様ごとの最大サイズで膣が造られるため、スポーンクリニックでのダイレーションの主な目的は「膣の奥行きの萎縮を防ぐこと」です。
スポーンクリニックでSRSした時に必要となる、ダイレーションの間隔は下表の様になります。
術後からの期間 | ダイレーションの頻度 |
---|---|
術後3ヶ月まで | 1日3〜4回 |
術後4〜6ヶ月 | 1日2〜3回 |
術後6〜12ヶ月 | 1日1〜2回 |
術後1年後以降 | 週に2〜3回 |
※各ダイレーションの間隔は均等に時間を空ける方が良く(1日3回なら8時間ごと)、1日の回数は膣の奥行きの萎縮具合で判断します。
ダイレーションは1回15〜30分ほどですが、準備時間を入れると1時間近くかかる場合がほとんどです。
上の表から分かるように、術後最低6ヵ月間はフルタイムの仕事復帰に支障が生じます。自営業やアルバイト、学生の方はある程度自由がきくと思いますが、一度膣の深さを失ってしまった(膣が萎縮してしまった)ら、取り戻すことは出来ません。
ルックスクリニックのダイレーション方法と頻度の概要
ルックスクリニックでは、術後3ヵ月間は1日3回(各10分ごと)のダイレーションを推奨しています。
専用のソフトダイレーターを使い、最も細い径のダイレーターから、膣を拡張する様にサイズアップしていきます。
ダイレーションの間隔は下表の様になります。
術後からの期間 | ダイレーションの頻度 |
---|---|
術後3ヶ月まで | 1日3回 |
術後3〜6ヶ月 | 1日1回 |
術後6ヶ月以降 | 週に2-3回程度 |
術後9ヵ月以降 | 週に1-2回程度 |
※各ダイレーションの間隔は均等に時間を空ける(1日3回なら8時間ごと)事をお勧めしています。
個々人でのダイレーションの違い
個々人の体質や術式によって、ダイレーションの必要性や頻度が異なることがあります。また、個人差によって、ダイレーションの感覚や負担にも違いが生じることがあります。そのため、自分に合ったダイレーションの方法や頻度を見つけることが重要です。
有名ブロガー・YouTuberが「ダイレーションが楽」と書いているから、その方と同じ術式を選ぶのは誤りです。術式はあくまでもご自身の体質やライフスタイルに応じて選ぶもので、他の患者の例を参考にするべきではありません。
MtF SRS帰国後の消毒やダイレーション時の消耗品について
タイでの滞在中は、毎日ダイレーションがあります。
この時に使い慣れている消耗品(コットンや綿棒、ガーゼなど)を「帰国後も続けて使いたい」という方は少なくありません。
もちろん、通院中に使っている消耗品そのものを揃える必要は全くなく、代用品でも構わないのですが「やっぱり、使い慣れている消耗品を使いたい」という場合は、この記事を参考に揃えてみてくださいね。
この記事では、特に優先度の高い(利便性の高い)ものから順番にご紹介いたします。
MtF SRS帰国後ダイレーションのアドバイスはありますか?
タイSRSガイドセンターをご利用の方には、帰国前にダイレーションのコツを紹介するケアブックをお渡ししています。
まず、ダイレーションは「帰国後3ヵ月以内にダイレーター5番まで達すること」という、執刀医からの約束があります。
この約束を守っていれば、あとはマイペースでダイレーションを進めても問題ありません。通常は、7〜10日ごとにサイズアップ(次の大きさのダイレーターを使う)する事になります。
サイズアップが難しければ、今のサイズのダイレーターを続けて使用するか、30分ほど今のサイズのダイレーターを使ってからサイズアップすると楽です。
ここで、ガモン病院から貰えるダイレーターを見てみましょう。写真の一番右端の物が、退院後に使用するダイレーターです。
写真で見ると何気ないですが、実物を見ると、5番のダイレーターはかなり大きく見えるでしょう。
ダイレーションをサボった結果、ダイレーターが入らなくなったり、膣が癒着してしまった場合は、全て自己責任となります。ダイレーションと仕事との両立は難しいかもしれませんが、この事を言い聞かせて、頑張りましょう。
そんなダイレーションを進める中で、生じるのがこんな質問です…。
残念ながら、答えは「NO」です。
ダイレーターが硬いのには理由があるからです。
ダイレーションとは、皮膚を広げて拡張するという目的があります。ダイレーターが硬くなければ収縮する皮膚にダイレーターが負けてしまいます。
ただし、ダイレーションとダイレーションの間のつなぎに留置式ダイレーターを利用する事は、ダイレーション時の痛みの軽減に有効でしょう。
かといって、皮膚を拡張しようと非常に強い力で引っ張ったり、大きすぎるオモチャを利用する事は危険ですので、お止めください。
安全かつ効果的にダイレーションを行う様に、お願いいたします。
S字結腸法でも、ダイレーションは一生必要ですか?
S字結腸法とは?
S字結腸法では、腹部のS字結腸を利用して、新たな膣を形成します。この術式は、自然な質感と機能を持つ膣を作ることができるため、一部の患者にとって魅力的な選択肢となっています。
S字結腸法の他にも、陰茎の皮膚を利用した陰茎皮膚反転法や、陰嚢の皮膚を利用した陰嚢皮膚移植法などがあります。S字結腸法は、自然な膣の湿り気を保つことができ、他の術式に比べて膣の奥行きが確保できるという特徴があります。
S字結腸法の長所と短所
S字結腸法の長所は、自然な膣の機能と見た目を再現できることです。また、他の術式に比べて膣の奥行きが確保できるため、性交時の快感が向上する可能性があります(パートナーの好みにより短所にもなり得る)。
一方、短所としては、手術の負担が大きく、合併症のリスクが高いことが挙げられます。また、S字結腸独特の蠕動運動が強くでる方が年々増加しており、ダイレーションや性交時の痛みが陰嚢皮膚移植法と比べて強く出る場合があります。この様な場合でも、手術後のダイレーションの継続が必要であることが、患者にとって負担となる場合があります。
なお、S字結腸法による手術には、将来的に腸閉塞を起こすリスクがありますので、術式を選ぶ際は希望する膣の深さと、合併症やメンテナンスなどのリスクがつり合っているかどうかを判断する必要があります。
S字結腸法後のダイレーションの重要性
S字結腸法でも膣の入り口は陰嚢皮膚由来の組織のため、長期間ダイレーションをしないことで膣の入り口の萎縮が起こる場合があります。今のところ、S字結腸法でSRSを受けた後、何年もダイレーションしないことでどの様な影響が生じるかは不透明ですが、思いもよらない症状が起こる可能性があり、注意が必要です。
また、S字結腸法で長期間ダイレーションしないことで膣内に汚れや老廃物が蓄積し、臭いや下着汚れの元になったり、腹痛や膣瘻の原因となる可能性もあります。
S字結腸法を受けた方は、他の術式に比べて膣の奥行きが深いため、ダイレーションによるケアが十分に行われないと、狭窄や閉塞のリスクが高まります。そのため、S字結腸法を受けた方は、ダイレーションの継続が特に重要となります。
S字結腸法におけるダイレーションの長期的な役割
S字結腸法でも陰嚢皮膚移植法でも、術後1年ほどで1週間に1回程度にダイレーションの間隔を開けることができる可能性があります。
S字結腸法では、一生ダイレーションを行う必要があるわけではありませんが、定期的なケアが継続的に必要です。膣の状態が安定したら、ダイレーションの頻度を減らすことができますが、完全に止めることは推奨されません。
S字結腸法は自然な膣の機能と見た目を再現することができるメリットがありますが、手術後のケアとして他の術式と同様に継続的なダイレーションが必要となります。
手術後の膣の健康を維持するために、お客様自身が適切なダイレーションの方法や頻度を継続して実践することが重要です。S字結腸法を検討している方は、手術法やケアについて十分に情報収集し、現在のライフスタイルと本当に合っているのか、弊社スタッフと相談して最適な選択を行うことが大切です。
実話:あなたは術後の一番大事なダイレーションのサポートに無関心な業者にアテンドを依頼する勇気がありますか?
誹謗中傷ではありませんので、この記事に関して誹謗中傷しないようにお願いします。
匿名となっていますが、本当の実話です。
あなたはMtF(男性から女性へ)の術後の一番大事なダイレーションのサポートに無関心な業者にアテンドを依頼する勇気がありますか?
結論: 必ず確認してから契約しましょう。知識や経験のないところには依頼しない方が賢明でしょう。