【2026年更新】性別適合手術は保険適用されたのに、なぜほとんど使えない?――「混合診療」の壁をやさしく解説

記者:

横須賀 武彦

2017年12月13日

 

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この記事は、SRSが2018年に保険適用になったけど、ホルモン療法が保険外のため「混合診療」で手術も自己負担になりやすい現状を整理しているケロ🐸。 結果、保険で受けられるのは「ホルモン治療歴がない人」に限られ、実例はごく少数だケロ。 最新の適用可否は必ず認定施設や保険者に確認してね。

【まず結論】2018年に保険は適用された。でも「ホルモン治療歴があると手術も全額自己負担」の壁が2026年も残っています

まず、多くの方がいちばん知りたい点からお答えします。

  • 2018年4月、性別適合手術(SRS)は健康保険の対象になりました。乳房切除術や造膣術などが対象です。
  • しかし、ホルモン療法は今も保険適用外(自由診療)のままです。(2026年7月時点)
  • そのため、ホルモン治療を受けている(受けたことがある)人が手術を受けると「混合診療」と扱われ、手術を含めて全額自己負担になります。
  • 結果として、保険で手術を受けられるのは「ホルモン治療歴が一度もない人」に限られ、実際に保険が使われた例はごくわずかにとどまっています。

この記事は、性別適合手術(SRS)への健康保険適用について、2026年7月時点の制度の事実を整理し直したものです。この「混合診療の壁」は、制度が始まった直後の2018年から読売新聞の医療サイトなどで報じられてきましたが、2026年7月現在も解消されていません。実際、認定施設である富山大学附属病院の公式ページにも「ホルモン療法を先行して開始している場合には、これらの外科治療は混合診療とみなされるため保険治療の対象とはなりません」と明記されています。

そもそも、どこまでが保険適用?(対象になる手術・ならないもの)

2018年4月1日、平成30年度の診療報酬改定で、性同一性障害(性別不合)の手術療法に健康保険が適用されました。(出典:GID.JP)

保険の対象になった主な手術は、次のようなものです。

区分 保険の対象になる主な手術(例)
MtF(男性→女性)側 精巣摘出術、陰茎全摘術、造膣術 など
FtM(女性→男性)側 乳房切除術、子宮全摘術、子宮附属器(卵巣等)摘出術、陰茎形成術、尿道形成術 など

一方で、次のものは保険の対象外(自由診療)です。

  • ホルモン療法(後述の「混合診療」問題の核心)
  • 脱毛、豊胸、顔の女性化手術(FFS)などの美容目的とされる施術

ポイント:「手術に保険が使える」といっても、対象は上記のような術式に限られます。何が対象で何が対象外かは、必ず受診先の認定施設で確認してください。

【本題】保険が適用されたのに、なぜほとんど使えないの?――「混合診療」の壁

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい点です。

Q. ホルモン療法が保険適用外だと、なぜ「手術」まで自己負担になるの?

日本の公的医療保険には、「混合診療の禁止」というルールがあります。同じ病気の一連の治療の中で、保険がきく治療(保険診療)と、保険がきかない治療(自由診療)を混ぜて受けると、原則として“全体が自由診療”として扱われる、という仕組みです。

性別適合手術に当てはめると、こうなります。

  1. 多くの当事者は、ガイドライン上も、手術の前段階としてホルモン療法を受けています。
  2. ところが、ホルモン療法は保険適用外です。厚生労働省の整理では、「性同一性障害(性別不合)という病気に対して効能・効果が承認されたホルモン製剤が存在しない」ことが理由とされています。
  3. すると、「保険がきかないホルモン療法」+「保険がきく手術」を一連の治療として行う=混合診療と判断され、手術も含めて全額自己負担になってしまいます。

厚生労働省の通達でも「性別適合手術とホルモン製剤の投与を一連の治療において実施する場合は、原則、混合診療となる」とされています(出典:GID.JP/厚労省の整理)。

Q. つまり、どういう人なら保険で手術できるの?

制度上、「ホルモン治療を一度も受けたことがない人」の手術に限って保険が適用される、という状況です。裏を返すと、すでにホルモン療法を続けてきた多くの当事者は、保険適用の対象から外れてしまうことになります。

なお、認定施設であっても、施設の方針により保険適用の対象を乳房切除術などに限定している場合があります(例:山梨大学)。実際にどの手術が保険で受けられるかは、必ず受診先の施設にご確認ください。(出典:山梨大学形成外科)

Q. 実際に保険で手術を受けた人は、どれくらいいるの?

保険適用が始まった初年度(2018年度)、認定施設で行われた性別適合手術のうち、保険が適用されたのはごくわずかでした。日本経済新聞は、学会の集計として、認定施設で行われた手術約40件のうち、保険適用は4件(約1割)にとどまったと報じています(残りは混合診療などで自費)。

弊社が2018年当時にお伝えした振り返り記事でも、「保険適用となったのは僅か1件のみ」という当時の状況をお伝えしていました。制度が始まっても“ほとんど使われない”という構図は、その後も大きくは変わっていません。

保険で手術できる病院(認定施設)は増えた?――「認定」と「実際にSRSまで行う施設」は別

保険で手術を受けるには、関連学会(日本GI/性別不合学会)の基準を満たした認定施設で受ける必要があります。認定施設になるには、

  • 形成外科・泌尿器科・産婦人科のいずれかを標榜する病床のある病院であること
  • 関連学会の認定医がいること
  • 当該手術を合わせて20例以上実施していること
  • ガイドラインを遵守し、関連学会と連携していること

といった条件があります(出典:GID.JP)。

認定施設の数自体は、制度開始時(2018年)の数施設から少しずつ増えています。ただし注意したいのは、「認定を受けた施設」と「実際にMtFの造膣術のような性別適合手術まで手掛けている施設」は必ずしも一致しないという点です。乳房切除や子宮・卵巣の摘出(FtM側の手術)は行っていても、MtFの造膣術までは実施しない施設もあります。

富山大学附属病院は、2026年2月に外陰部女性化術・造膣術を開始(2026年3月に北陸初の実施成功を発表)しました。同院は国内では6施設目にあたり、2024年9月に日本GI(性別不合)学会の認定を受けています。同院の公式ページでも、保険適用の条件は「ホルモン治療を先行して開始していないこと」とされており、2026年になってもこの“混合診療の壁”が残っていることが改めて確認できます(出典:富山大学附属病院ジェンダーセンター)。

学会は「ホルモン療法も保険適用に」と要望を続けている

この混合診療の問題について、日本精神神経学会などの関連学会は、ホルモン療法にも保険を適用するよう国に要望を続けています。ほとんどの当事者は望む性別のホルモン療法を受けたうえで手術に進むため、ホルモン療法が保険適用外である限り、手術の保険適用が“絵に描いた餅”になりやすいためです。

なお、診療の指針である「性別不合に関する診断と治療のガイドライン」は改訂が重ねられ、第5版(一部補正)が2025年11月に公表されています。制度・ガイドラインは今後も動く可能性があるため、本記事の内容も定期的に見直します。

タイでのSRSを検討している方への影響

以上をふまえると、タイでのSRS(性別適合手術)を検討されている方にとっては、次のように整理できます。

  1. 「日本なら保険で安く手術できる」と一概には言えません。すでにホルモン療法を続けてきた方の場合、日本で手術を受けても混合診療で全額自己負担となり、保険のメリットを受けられないことが多いのが実情です。
  2. 保険が使えるかどうかは、術式・施設・ホルモン治療歴などの条件次第です。ご自身が対象になるかは、受診を検討している認定施設や保険者に必ずご確認ください。
  3. 費用だけでなく、待機期間や症例数・術式の選択肢も判断材料になります。日本は認定施設・執刀医が限られ、MtFの造膣術まで手掛ける施設はさらに絞られます。タイは症例数が多く、術式の選択肢が広い傾向があります。

タイでSRSが選ばれてきた背景の一つに、この「保険が使いにくい」という日本側の事情があります。日本とタイの費用・待ち時間・保険・症例数の違いは、別記事「【2026年版】タイと日本、SRSはどう違う?」で詳しく比較しています。

なお、タイの手術費用の目安は術式によって異なります。たとえばガモン病院のMtF(陰嚢皮膚移植法)の手術費は330,000バーツ(約1,600,500円)です。これは手術費のみの目安で、渡航・滞在・アテンドなどを含む総額とは異なります。ご自身の術式での総額は、お見積もりや弊社LINE窓口でご確認ください。

「誰に確認すればいい?」相談先の振り分け

確認したいこと 相談先
自分のケースで日本の保険が使えるか(ホルモン治療歴の扱い・対象術式) 受診を検討している認定施設・加入している健康保険(保険者)
ホルモン療法の内容・術前の休薬・術後の症状など医学的な判断 医師・薬剤師
タイでのSRSの費用・術式の選び方・渡航や滞在の段取り・見積もり 弊社スタッフ・LINE窓口

私たち(アテンド会社)は医療・保険の有資格者ではないため、「あなたは保険が使える/使えない」といった制度上の判断を代行することはありません。保険適用の可否は医療機関・保険者へ、タイでの手術の費用や段取りの手配は私たちへ――この線引きが、安心してご相談いただくための約束です。

まとめ:保険は「適用された」。でも「使える人は限られる」のが2026年の現実

  • 2018年4月、性別適合手術(SRS)は健康保険の対象になりました(乳房切除術・造膣術など)。
  • しかしホルモン療法は今も保険適用外で、ホルモン治療歴があると手術も混合診療で全額自己負担になります。
  • そのため保険が使えるのは「ホルモン治療歴が一度もない人」に限られ、保険適用の実例は初年度で約1割(約40件中4件)とごくわずかでした。
  • 認定施設は少しずつ増えていますが、MtFの造膣術まで手掛ける施設は限られ、富山大は2026年2月に外陰部女性化術・造膣術を開始(北陸初、国内6施設目)しました。
  • 学会はホルモン療法の保険適用を求め続けており、制度は今後も動く可能性があります。

ご自身のケースで保険が使えるかどうかは、必ず最新の情報を、受診先の認定施設や保険者にご確認ください。タイでのSRSの費用・段取りに関するご相談は、弊社のLINE・お問い合わせ窓口でも承っています。

参照した主な一次・報道ソース

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