【2026年更新】S字結腸法の方が後のケアを考えると良い?――陰嚢皮膚移植法との違いを解説
記者:
横須賀 武彦
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2013年8月6日
4,206

【 ご質問 】
MtF/SRS手術ですが、S字結腸法の方が後のケア等を考えると良いのではないでしょうか?
【まず結論】長期的にはケアが軽くなる傾向はありますが、「差がない」わけではありません
S字結腸法は、陰嚢皮膚移植法や陰茎皮膚反転法に比べて、長期的にはケアの手間が軽くなる傾向にあります。ただし、「ケアが楽」と単純に言い切れるわけではありません。結腸特有の蠕動運動(腸が本来持つ収縮する動き)が強く出る方では、ダイレーションや性交渉そのものが難しく感じられることがあり、当社がこれまでアテンドしてきた実例では、その割合はおおよそ4人に1人〜3人に1人程度です。術式を選ぶ際は、ケアの手間の大小だけでなく、この点もあわせて踏まえていただくことをお勧めします。
ダイレーションの頻度そのものは、術式で大きくは変わりません
実は、術後のダイレーションの頻度そのものは、S字結腸法でも陰嚢皮膚移植法でも大きくは変わりません(PPVは進め方が異なります。後述します)。当社がご案内しているガモン病院の場合、退院後の頻度の目安は次のとおりです。
術後3ヶ月まで:1日2回
術後4〜6ヶ月:1日1〜2回
術後6〜12ヶ月:1日1回程度
術後1年以降:週2〜3回
この頻度をどこまで減らせるかは個人差が大きく、1年を過ぎても1日2回から減らせない方も少なくありません。つまり、術式による違いは「頻度が多いか少ないか」よりも、「何のためにダイレーションをするか」「ダイレーションそのものがどれだけ負担になるか」という質の違いにあります。
ダイレーションの目的の違い――開口部だけか、奥行きも含むか
S字結腸法は、結腸の一部を膣として使う術式です。結腸の粘膜は自然に潤いを保ちやすく、奥行き(深さ)自体は縮みにくいため、ダイレーションの主な目的は膣口(入り口)の開口面積を保つことにあります。ただし、この入り口の部分は陰嚢皮膚に由来する組織でもあるため、長期間ダイレーションを怠ると入り口だけが狭くなることがあります。奥行きの心配が小さいからといって、入り口のケアが不要になるわけではありません。
一方、陰嚢皮膚移植法は陰嚢の皮膚を使って膣を形成する術式です。皮膚は本来、時間とともに収縮しようとする性質があるため、ダイレーションでは開口部の確保に加えて、奥行きを保つことも目的になります。
S字結腸法特有の「蠕動運動」がダイレーション・性交渉の負担になることがあります
S字結腸法では、結腸がもともと持つ蠕動運動(腸が内容物を送り出すために収縮する動き)を、ダイレーション中や性交渉の際に痛みやキツさとして感じることがあります。この蠕動運動が強く出る方では、ダイレーションを続けること自体が負担になったり、性交渉が現実的でなくなったりするケースもあります。当社がこれまでアテンドしてきた実例では、この割合はおおよそ4人に1人〜3人に1人程度です。
海外の学会誌では、S字結腸法による性交渉時の痛み(dyspareunia)の頻度を数パーセント程度と報告するものが中心で、当社の実感とは差があります。母集団や、痛み・キツさをどう定義して聞き取るかの違いによるものと考えられ、どちらか一方が誤っているというより、実際に体感する負担には幅があるとご理解ください。当社の観察では、日頃の生活習慣・食生活や、緊張・不安といった精神的な要因も、蠕動運動の感じ方に影響していると見られます。
この負担は、渡航前の診察や問診だけで正確に予測することは難しく、実際にダイレーションを始めてから分かることが多いのが実情です。ご不安な場合は、渡航前に弊社スタッフへご相談いただくとともに、渡航後は執刀医の診察でご自身の状態を確認しながら進めてください。
陰嚢皮膚移植法で気をつけたい「膣の萎縮」について
陰嚢皮膚移植法では、皮膚が時間とともに収縮しようとする性質があるため、ダイレーションを怠ると奥行きが狭くなる「萎縮」が起こり得ます。S字結腸法の奥行きに比べると、この心配は大きくなります。術後の頻度の目安は前述のとおりで、個人差が大きいため、渡航前後の診察で執刀医の指示に従ってください。
陰嚢皮膚移植法の術後に気になる症状(肉芽など)については、MtFですが陰嚢皮膚移植法で帰国後に肉芽ができましたが?でも取り上げていますので、あわせてご覧ください。
S字結腸法ならではの、その他の注意点
このほか、結腸を使うことに伴う固有の注意点として、腸閉塞が起こる可能性があります。詳しくはMtF SRS S字結腸法で腸閉塞になる確率は?でも回答していますので、あわせてご確認ください。
【2026年時点の補足】第三の選択肢「PPV」について
現在は、S字結腸法・陰嚢皮膚移植法に加えて、陰茎腹膜膣形成術(PPV)という術式も存在します。当社では、既存の2術式と比べて選択するメリットが少ないという考えから、腸に持病があってS字結腸法が選べず、かつ過去の睾丸摘出により陰嚢皮膚移植法でも十分な奥行きが取れない方に限ってPPVをご案内しています。つまりPPVは、S字結腸法・陰嚢皮膚移植法と並べて選べる「第三の選択肢」というより、どちらも使えない方のための代替術式という位置づけです。
ダイレーションの進め方も他の2術式とは異なります。PPVでは1か月ごとにダイレーターのサイズを上げていき、最終的なサイズに達するまで半年以上かけるという、比較的緩やかな進行が必要です。海外の文献でも「PPVはダイレーションの負担が軽い」という説が語られることがありますが、長期的なデータの裏付けはなく、実際には陰茎皮膚反転法と同程度かそれ以上のダイレーションが必要になるとする報告もあります。腹部からアプローチする術式であるため、周辺の臓器に影響が及ぶリスクの範囲も他の2術式より広くなり得ます。
今回のご質問(S字結腸法と陰嚢皮膚移植法の比較)については、まずこの2つを軸にご検討いただくかたちで差し支えありません。PPVの詳細はガモン病院の第5のSRS「腹腔鏡による陰茎腹膜膣形成/PPV」術についてで整理しています。
経験者の声――同じS字結腸法でも感じ方はさまざまです
術後の経過や満足度には個人差があります。同じS字結腸法について、S字結腸法を選んで満足した人たちの話とS字結腸法を選んで後悔した人たちの話では、異なる経験が語られています。どちらか一方が正しいというより、蠕動運動の感じ方やダイレーションの継続、分泌液の状態といった術式の特性を、ご自身の体質や生活と照らして考えていただくことが大切です。
タイでのSRSを検討中の方へ
S字結腸法と陰嚢皮膚移植法のどちらを選ぶかは、ケアの手間の大小よりも、ご自身の体質(腸の持病の有無、蠕動運動の感じやすさなど)や、開口部と奥行きのどちらのケアに重きを置きたいかによって変わってきます。特に蠕動運動によるダイレーション・性交渉への影響は、渡航前に完全には予測しきれません。術式選びに迷う場合や、実際にダイレーションを始めてから負担が大きいと感じた場合は、遠慮なく執刀医や弊社スタッフにご相談ください。
ご相談の窓口――内容に応じて専門家におつなぎします
- 術式の適性・症状の判断など(医療判断) … 執刀医・医療スタッフへおつなぎ・ご確認いただきます。
- 渡航スケジュール・費用の確認・手配など(私たちの実務範囲) … 弊社スタッフ・LINE相談窓口へ。ご渡航前でもお気軽にどうぞ。









ダイレーション頻度自体は術式で大差なく、開口部だけのケアか奥行きも含むかで負担の質が変わるよ。
迷ったら渡航前にLINEで相談してね🙂
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