【2026年更新】FtM内摘(子宮・卵巣摘出)の術式ガイド|開腹・腹腔鏡・膣式は何が違う?どう選ぶ?
記者:
JWC 加地
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2018年7月15日
4,074

FtM(女性から男性)の内摘(子宮・卵巣摘出手術)には、傷の入れ方が異なる複数の術式があります。「開腹」「腹腔鏡」「膣(経膣)式」、そして近年は第4の術式として「vNOTES(経膣的内視鏡手術)」も選べるようになりました。「どれが自分に向いているの?」「次に予定している陰茎形成やミニペニス形成に影響しない?」——このページは、そうした内摘の術式にまつわる疑問を一つにまとめたガイドです。
結論から言うと、術式は「あなたの体質・子宮や卵巣の状態・過去の手術歴・希望する次の手術」を踏まえて、病院の術前検査と執刀医の判断で決まります。どの術式が優れているという単純な優劣はなく、傷の大きさ・回復の早さ・受けられる条件が術式ごとに違う、というのが正確な理解です。以下で順番に整理します。
用語の整理:「内視鏡」と「腹腔鏡」は違います
内視鏡と腹腔鏡の違いがわからない?
まず言葉の整理です。「内視鏡」は、胃カメラや大腸カメラのように、体の自然な開口部(口・肛門など)からカメラを入れて体内を観察・処置する機器・手法の総称です。一方、「腹腔鏡」は、お腹に数か所の小さな穴を開け、そこからカメラと器具を入れてお腹の中の手術を行う方法を指します。内摘で「腹腔鏡による子宮・卵巣摘出」と言うときは後者を指しており、「内視鏡手術」という呼び方は正確ではありません(広い意味では腹腔鏡も内視鏡の一種ですが、婦人科の術式名としては区別して使います)。
術式名は病院・執刀医と話すときの共通言語になります。呼び方があいまいなまま話が進むと行き違いのもとになりますので、このガイドでは以下、婦人科で使われる呼称に合わせて「開腹」「腹腔鏡」「膣(経膣)式」「vNOTES」と表記します。
内摘の術式:開腹・腹腔鏡・膣式・vNOTESの違い
子宮卵巣摘出の開腹手術と膣式や腹腔鏡手術は、どう違う?どれを選べばいい?
胸オペと同じく、内摘にも「傷の入れ方」による種類があります。傷の場所・回復の早さ・術後の痛み・受けられる条件を並べて比べると、次のようになります。
| 開腹法 | 膣(経膣)式 | 腹腔鏡法 | vNOTES | |
| 傷の場所 | お腹(へそ下)に横切開の傷 | 見える場所に傷はできない(膣内部を切開) | お腹(へそ周り)に数か所の小さな傷 | お腹に傷はできない(膣からカメラを入れる) |
| 手術の方法 | お腹を切り開いて子宮・卵巣を摘出する | 膣の内部から子宮・卵巣を引き出しながら摘出する | 腹部の小さな穴からカメラと器具を入れ、子宮・卵巣を膣経由で摘出する | 膣からカメラと器具を入れ、お腹に穴を開けずに摘出する(膣式と腹腔鏡のハイブリッド) |
| 術後の回復の早さ | ゆっくり(★) | 早い(★★★) | やや早い(★★) | 早い(★★★) |
| 術後の痛み | 大きめ(★★★) | 小さめ(★) | 中くらい(★★) | 小さめ(★) |
| 術後の出血リスク | 低め(★) | 高め(★★★) | 中くらい(★★) | 中くらい(★★) |
| 受けられる条件の目安 | 条件は少ない(大きな子宮筋腫や癒着があっても対応しやすい) | 子宮筋腫が大きい場合は不可のことがある | 高度の肥満などで不可のことがある | 腹腔内に高度の癒着があると不可のことがある |
※★は各術式を相対的に比べた傾向を示すもので、優劣を断定するものではありません。実際の傷の大きさ・回復日数・可否は、子宮や卵巣の状態、体質、執刀医の方針によって変わります。
それぞれの特徴を、もう少し詳しく見ていきます。
- 開腹法……お腹を横に切開して摘出します。最も歴史が長く、大きな子宮筋腫や過去の手術による癒着があっても対応しやすいのが利点です。一方で傷が大きく、痛みや回復にかかる時間は他の術式より長めです。傷は時間とともに目立ちにくくなりますが、ケロイド体質の方は傷口が盛り上がることがあります。
- 膣(経膣)式……お腹の外に傷を残さず、膣の内側からアプローチする方法です。回復が早く帰国後に早く動きたい方に向く一方、子宮・卵巣を物理的に引き出す術式の性質上、術後の出血リスクが相対的に高いとされ、無理な動きは禁物です。子宮筋腫が大きい場合は適応外になることがあります。
- 腹腔鏡法……お腹に小さな穴を数か所開けて行います。開腹より傷が小さく回復が早いのが利点です。高度の肥満などでは適応外になることがあります。
- vNOTES(経膣的内視鏡手術)……膣式と腹腔鏡を組み合わせた比較的新しい術式で、お腹に傷を付けず、膣からカメラと器具を入れて手術します。お腹の傷がなく術後の痛みが軽い・入院が短い傾向がある一方、腹腔内に高度の癒着が予想される場合は適応が難しいとされます。詳しくは下の専用の節で解説します。
一般に、開腹は術後の入院がやや長め・自宅療養も長め、腹腔鏡や膣式・vNOTESは入院が短く社会復帰が早い傾向があります(日本国内の一般的な子宮全摘でも、開腹は術後7日前後の入院・数週間の自宅安静、腹腔鏡は術後4日前後の入院とされます)。ただし数字はあくまで一般的な目安で、実際の日数は病院・術式・経過で異なります。
第4の術式「vNOTES」とは?お腹に傷が残らない新しい方法
vNOTES(ブイノーツ/経膣的内視鏡手術)は、膣(経膣)式と腹腔鏡を組み合わせた比較的新しい術式で、「第4の術式」として正式に選べる病院が出てきています。膣からカメラと手術器具を入れて子宮・卵巣を摘出するため、お腹の表面には傷が残りません。腹腔鏡の「小さな穴から内視鏡で操作する」長所を、膣というもともとの開口部から行う——いわば腹腔鏡の発展形にあたる考え方で、傷が見えないのが特徴です。
お腹に傷がないぶん術後の痛みが軽く、入院・回復が短い傾向があるとされます。一方で、腹腔内に高度の癒着が予想される場合には適応が難しいとされ、受けられるかどうかは術前検査と執刀医の判断によります。日本国内でも2020年頃から婦人科で導入が進んでいる新しい方法です。
タイではガモン病院がvNOTES法を正式に提供しています(内摘・手術費用のみの目安は約634,400円)。バーツ額・提供の有無は改定されるため、最新は各病院ページの費用表が正となります。ヤンヒー病院・ルックスクリニックでの提供の有無は下記の病院別の提供状況をご確認ください。
マンガで分かる:術式のメリットとデメリットは?
術式ごとのメリット・デメリットは、マンガでも解説しています。文章より直感的につかみたい方は、こちらの解説ページもあわせてご覧ください。
» 子宮卵巣摘出の術式の違いによるメリットとデメリット(マンガ解説)
※腹部切開法は帰国後すぐに仕事に戻りたい方には負担が大きいため、そうした方には膣式・腹腔鏡・vNOTESといった低侵襲の術式が案内されることが多いです。ただし最終的にどの術式が可能かは、術前検査と執刀医の判断によります。
術式の選び方と、手術できないことがあるケース(体質・既往)
ここまで見てきたとおり、術式は「傷を小さくしたい」という希望だけで自由に選べるわけではありません。子宮や卵巣の大きさ、肥満の程度、過去の手術による癒着の有無などによって、選べる術式が絞られます。判断材料をそろえるために、事前に日本の医療機関で子宮筋腫の有無などを検査しておくとスムーズです。
盲腸の手術をしているのですが、全腹腔鏡下子宮全摘手術は可能ですか?
過去にお腹の手術(盲腸=虫垂炎の手術など)を受けていても、それだけで腹腔鏡が一律に不可になるわけではありません。従来は「内臓・消化器の手術歴がある場合は開腹のみ」と案内されることもありましたが、盲腸の手術歴があっても腹腔鏡での手術が問題なく行えるケースは多くあります。
ただし、開腹手術の既往は腹腔内の癒着の可能性と関わります。癒着が強いと腹腔鏡や膣式・vNOTESでの操作が難しくなり、安全のために開腹に切り替える判断がされることもあります。可否は最終的に、過去の手術内容と術前検査をもとに執刀医が判断しますので、手術歴がある方は予約前に必ず内容をお伝えください。
次の手術(陰茎形成・ミニペニス形成)への影響
全腹腔鏡での子宮卵巣摘出はしない方がよい?(次の段階に進めなくなる?)
「次の段階の手術を考えるなら、全腹腔鏡での子宮卵巣摘出はしない方がよい(それをすると次に進めない)」という情報を見て不安になる方がいます。これは、手術を受ける条件が病院・執刀医によって異なることに由来する話です。かつて、全腹腔鏡での内摘後の陰茎形成を受け付けないとする執刀医のコメントが紹介されたことがあります。
この種の条件は病院・執刀医によって異なり、時期によっても変わります。陰茎形成など次の段階の手術を考えている方は、内摘の術式を決める前に、希望する病院で受けられるかを必ず事前確認してください(受入状況の確認は弊社スタッフ/LINEでもご案内できます)。ステージをまたぐ計画は、最初の段階で相談しておくほど選択肢を残しやすくなります。
※ミニペニス形成・陰茎形成そのものの内容は、別ページで解説しています(» ミニペニス(陰核陰茎)形成手術/» 陰茎形成術3つの手術方法)。ステージごとに違う病院で手術できるかについては » ステージごとに違う医療機関で手術することは可能ですか? もあわせてご覧ください。
よくある誤解:ホルモン治療は内摘に必須?
ホルモン治療は必須ではないと言われましたが、本当ですか?
「乳腺摘出(胸オペ)や子宮・卵巣摘出にホルモン治療は必須ではない」と説明されることがありますが、手術の種類と病院によって扱いが異なります。現行の扱いは次のとおりです。
- 胸オペ(乳腺摘出)……ホルモン治療歴は不要です。
- 内摘(子宮・卵巣摘出)……一定期間のホルモン治療歴が必要です。ガモン病院・ルックスクリニックは6ヶ月以上、ヤンヒー病院は1年以上のホルモン治療歴が求められます(現行)。
また、内摘には英文のGID(性同一性障害/性別不合)診断書が求められます(病院により推奨〜必須)。ホルモン治療歴の要件や必要書類は病院ごと・時期ごとに見直されるため、渡航前に最新の要件を必ずご確認ください。準備の進め方は » ホルモン治療歴と身上書の記入例(FtMの方) が参考になります。
病院別の現行の提供状況と費用の目安(ガモン・ヤンヒー・ルックス)
膣式子宮附属器全摘手術は、タイでも受けられますか?
はい。お腹に傷が残らず回復も早い膣(経膣)式の子宮・卵巣摘出は、タイでも受けられます。以前はガモン病院のみの提供でしたが、現在はガモン病院・ヤンヒー病院で選べるようになっています。ただしルックスクリニックは膣(経膣)式を提供しておらず、開腹・腹腔鏡のみです(下記の病院別の提供状況を参照)。予約前に、日本の医療機関で大きな子宮筋腫がないかを検査しておくと、適応の判断がスムーズです。
ヤンヒー病院でも膣式が受けられますか?
ヤンヒー病院では2017年9月より膣式による子宮・卵巣摘出の受付が始まり、現在も膣(経膣)式を含む複数の術式が提供されています。ただし、長期的なホルモン治療によって膣式が適用不可となる場合があるため、膣式を希望する方は事前確認が必要です(これはガモン病院も同様です)。開腹・膣式・腹腔鏡それぞれの費用や日程・条件は病院ごとに異なりますので、下記の各病院ページで最新情報をご確認ください。
現行の内摘(手術費用のみ・目安)——たとえばガモン病院の場合、開腹法 99,000バーツ(約483,120円)、腹腔鏡 125,000バーツ(約610,000円)、経膣・vNOTES 130,000バーツ(約634,400円)が目安です(いずれも手術費用のみで、術前検診・アテンド料金・滞在費・航空券は別)。ヤンヒー病院・ルックスクリニックは金額・提供術式が異なります。
費用と最新の提供術式は、必ず各病院の現行ページでご確認ください:
病院別・術式の提供状況(現行の目安):
| 開腹 | 腹腔鏡 | 膣式 | vNOTES | |
| ガモン病院 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| ヤンヒー病院 | ○ | ○ | ○ | 要問合せ |
| ルックスクリニック | ○ | ○ | ×(非提供) | 要問合せ |
※ ○=提供/×=非提供/要問合せ=各病院ページ・弊社窓口へご確認ください。ルックスクリニックは膣(経膣)式を提供していません(開腹・腹腔鏡のみ)。提供術式・費用は改定されるため、最新は各病院ページの費用表が正となります。
ガモン病院の最新の手術費用改定については » ガモン病院 FtM内摘 手術費用更新のお知らせ(2026年) を、手術条件の追加(HIV陽性・年齢・BMI等)については » ガモン病院・手術費用改訂と手術条件追加のお知らせ をご確認ください。
術後・滞在・帰国後の注意
内摘後の滞在と、帰国後の注意点は?
内摘は痛みが少なく体が元気に感じられても、体の中ではかなりの負担がかかっています。無理をすると、特に膣内の傷から多量出血する恐れがあります。滞在中〜帰国後は、以下にご注意ください。
手術後の滞在期間中:
- 術後(特に退院後)は、手術日から数えて最低5日間は遠出の観光(1日がかりの外出)を控えてください。
- 腹腔鏡や経膣で内摘を受けた方は、動きすぎる(歩きすぎる)と膣内の傷から多量出血の恐れがあります。
- 日本国内の手術でも術後1〜2週間の自宅療養が指示されるのが一般的です。同様にお考えください。
帰国後の生活:
- 術後から最低1か月は、温泉・プール・海などでの入浴や水泳を控えてください。
- 術後から最低1か月は、5kg以上の重い物を持ち上げたり持ち歩いたりしないでください(膣内の傷から多量出血の恐れがあります)。
パートナーと一緒に渡航していると、遠慮して相手の観光に無理に合わせてしまいがちです。療養を優先できるよう、渡航の組み方も含めて事前にご相談ください。私たちスタッフの注意に従わず観光に行き、行き先で緊急事態(多量出血で現地病院へ緊急搬送など)となった場合の費用・責任は負いかねます。
※滞在・食事・現地手配・スケジュールなど当社の実務範囲のご相談は弊社スタッフ/LINE窓口へ、術後の症状や投薬など医療判断は医師・薬剤師へ、戸籍・法的手続きは弁護士・行政書士・家庭裁判所へ、と内容によって相談先を分けてご確認ください。
どこに相談すればいい?
術式選びは、傷の希望だけでなく体質・子宮や卵巣の状態・過去の手術歴・希望する次の手術まで含めた総合判断です。「自分の場合はどの術式が可能か」「次の段階の手術まで受けられるか」は、当事者としてタイで実際に手術を経験したスタッフが、書類の準備から病院・術式の相談まで一緒に整理します。どんな小さなことでも、お気軽にご相談ください(LINE相談窓口)。
※医療上の適応・可否の最終判断は病院の術前検査と執刀医が行います。当社は書類準備・現地手配・スケジュール・費用などアテンド会社として答えられる範囲をサポートします。
もっと詳しく知りたい方へ(関連ページ)
- » 腹腔鏡による子宮卵巣摘出の正確な術式名(全腹腔鏡下子宮全摘術=TLH)とは?
- » 腹腔鏡手術は開腹と比べてどれくらい回復が早い?
- » ステージごとに違う医療機関で手術することは可能ですか?
- » FtM手術後に起こりうる合併症と対処方法
参考・出典:本文中の各病院ページ(ガモン/ヤンヒー/ルックス)、ガモン病院 手術費用更新(2026年)・手術条件追加(2022年)の各お知らせ。vNOTES・術式一般の医学的説明は日本国内の産婦人科各施設の一般的な解説に基づく(術式の適応・可否の最終判断は執刀医)。









