【朗報】性別適合手術を受けずに性別変更が可能に!!
記者:
JWC 加地
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2024年2月12日
4,301

【結論】2026年7月時点:「ケースによっては手術なしでも可能」。ただし一律ではありません
まず、いちばん知りたい点からお答えします。
2026年7月現在、「手術(生殖腺の除去や外性器の手術)を受けていなくても、戸籍上の性別変更が認められた」という裁判所の判断は複数出ています。一方で、すべての人が一律に手術なしで変更できると法律で決まったわけではありません。個々のケースについて、家庭裁判所が事情を見て判断している、というのが正確な状況です。
この記事は、2024年2月に公開した記事を2026年7月時点の情報に全面的に更新したものです。2023年の最高裁決定のあと、法律や裁判所の判断がどこまで進んだのかを、日付と裁判所名をはっきりさせながら整理します。
前提:戸籍の性別変更「5つの要件」をおさらい
戸籍上の性別の取扱いを変更するための手続きは、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」(通称:性同一性障害特例法、2004年施行)に定められています。近年は医学的な診断名が「性同一性障害」から「性別不合(せいべつふごう)」へと移行しつつありますが、法律の名称は現在も上記のままです。
同法3条は、家庭裁判所が性別変更を認めるための要件として、おおむね次の5つを定めています。
| 通称 | 内容 |
|---|---|
| ① 年齢要件 | 18歳以上であること(2022年4月に「20歳以上」から引き下げ) |
| ② 非婚要件 | 現に婚姻をしていないこと |
| ③ 未成年の子がいないこと | 現に未成年の子がいないこと |
| ④ 生殖不能要件 | 生殖腺がないこと、または生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること(3条1項4号) |
| ⑤ 外観要件 | 変更後の性別の性器に近似する外観を備えていること(3条1項5号) |
このうち、多くの当事者にとって身体への負担が大きいのが④生殖不能要件と⑤外観要件です。この2つが「手術を受けないと性別変更ができない」と言われてきた根拠でした。手続きの概要は裁判所の案内ページでも確認できます。
何が変わった? 2023年〜2026年の司法判断を時系列で
2023年10月25日 ― 最高裁:④生殖不能要件は「違憲・無効」
最高裁判所大法廷は2023年10月25日、④生殖不能要件(3条1項4号)を、憲法13条に違反し無効であると全員一致で判断しました。「手術で生殖機能をなくすか、性別変更をあきらめるか」という過酷な二者択一を迫るものだ、というのが理由です。
一方で、⑤外観要件(同5号)については最高裁は結論を出さず、審理を広島高裁に差し戻しました。ただし、15人の裁判官のうち3人は「⑤外観要件も違憲だ」とする個別意見を述べており、次の焦点は外観要件に移りました。
ポイント: この時点では「④は無効・⑤は判断が持ち越し」でした。2024年2月に公開した本記事の初版は、この段階の状況を「朗報」としてお伝えしたものです。
2024年7月10日 ― 広島高裁:手術なしの性別変更を認める(差戻審)
差し戻しを受けた広島高裁は2024年7月10日、⑤外観要件について「違憲の疑いがある」と指摘したうえで、手術を受けていない申立人(戸籍上の性別を男性から女性へ)の性別変更を認める決定を出しました。ホルモン療法によっても外性器の形状は一定程度変化しうるとし、身体全体の状態から要件を満たすと判断したものです。手術を経ずに男性から女性への変更が認められたのは、当時としては極めて異例と報じられました。
2025年9月19日 ― 札幌家裁:⑤外観要件を「違憲」と判断
札幌家庭裁判所は2025年9月19日、⑤外観要件そのものを憲法13条に違反し無効であると判断しました。この事件は、体質的な事情からホルモン療法を受けられずにいた申立人について、女性から男性への変更を認めたものです。同日、別の申立てについても同様の判断が示されており、外観要件を正面から違憲とした司法判断として注目されました。
2025年10〜11月 ― 東京高裁:高裁として初めて外観要件を「違憲」と判断
さらに東京高裁は2025年10月31日付の決定で、⑤外観要件を当該申立人に適用することは憲法13条に違反すると判断しました(報道は同年11月)。長年ホルモン療法を続けても外観要件を満たさない人に手術を迫るのは、身体を傷つけられない自由を侵害する、という趣旨です。外観要件について高裁が明確に違憲と判断したのは初めてとされます。決定は国会に対し、特例法の改正を検討するよう促しました。
なお、性別変更を求める家事審判は「争う相手方」がいないため、認める決定はそのまま確定します。上記の申立人については、性別変更が確定しています。
2026年 ― なお続く議論:非婚要件は最高裁へ、外観要件の法改正は未了
もっとも、特例法をめぐる司法の動きは外観要件だけではありません。②非婚要件(現に婚姻をしていないこと)については、京都家裁が2025年3月に「直ちに違憲無効とは言えない」として変更を認めず、大阪高裁も2025年11月にこの判断を維持しました。申立人側は最高裁に特別抗告しており、2026年5月には申立人・弁護団による最高裁への要請行動が行われるなど、審理は現在も続いています。
一方、⑤外観要件そのものについての最高裁の憲法判断は、2026年7月時点でまだ示されていません。また、特例法の条文自体は改正されておらず、④生殖不能要件・⑤外観要件は法律の文言としては残ったままです。個々の家庭裁判所が、ケースごとに要件の適用を判断しているのが現状です。したがって、同じ「手術なし」でも、認められる場合と認められない場合があり得ます。
FtM(女性→男性)とMtF(男性→女性)で状況はどう違う?
要件をめぐる状況は、変更の方向によっても事情が異なります(あくまで一般的な傾向であり、個別の判断を保証するものではありません)。
- FtM(女性から男性へ): 従来から、乳房切除やホルモン療法によって⑤外観要件を満たすと扱われるケースがあり、比較的「手術(陰茎形成)なし」で認められやすいとされてきました。むしろ壁になっていたのが子宮・卵巣の摘出を含む④生殖不能要件で、これが2023年に無効とされた影響は小さくありません。さらに2025年の札幌家裁では、ホルモン療法や乳房切除手術を受けていない方の変更が認められた例も出ています。
- MtF(男性から女性へ): ⑤外観要件(外性器の女性化)が争点になりやすく、広島高裁(2024年)・東京高裁(2025年)の判断はいずれもMtFのケースでした。ホルモン療法で外観要件を満たすといえるか、また長年のホルモン療法でも外観が変わらない場合にどう判断されるかが、個別に問われています。
いずれの場合も、手術を受けるかどうかは本来「本人が望むかどうか」という別の問題です。戸籍変更の要件が緩和されていくことと、ご自身が身体の手術を望むこととは切り離して考えて差し支えありません。手術を選ぶことも、選ばないことも、どちらも尊重されるべき選択です。
タイでのSRSを検討している方への影響
タイでのSRS(性別適合手術)を検討されている方にとって、今回の一連の流れは次のように整理できます。
- 「戸籍変更のためだけに手術を受ける」という理由は、以前より薄れつつあります。④生殖不能要件が無効となり、⑤外観要件についても手術なしで認められた例が出てきたためです。
- 一方で、手術なしで確実に戸籍変更できると保証されたわけではありません。ケースによっては認められないこともあり得るため、「手術をしなくても必ず変更できる」と考えて準備を進めるのは早計です。
- 手術そのものの目的(身体の違和の解消、望む身体で生きること)は、戸籍変更の要件とは独立しています。ご自身が手術を望むのであれば、その意思は司法判断の動向とは別に尊重されます。
つまり、「戸籍変更に手術が必要か」と「自分が手術を受けたいか」を分けて考えることが、これまで以上に大切になっています。ご自身のケースで戸籍変更が認められる見込みや、必要な診断書・手続きについては、事前に専門家(家庭裁判所・弁護士等)や当センターにご相談ください。
まとめ:迷ったら、最新の状況を専門家に確認を
- 2023年10月、最高裁は④生殖不能要件を違憲・無効と判断しました。
- 2024年7月(広島高裁)、2025年9月(札幌家裁)、2025年10〜11月(東京高裁)と、⑤外観要件についても「違憲」とする判断が続いています。
- ただし最高裁による外観要件そのものの判断はまだ示されておらず、特例法の改正も2026年7月時点で行われていません。②非婚要件については、最高裁で審理が続いています。
- 結論として、「ケースによっては手術なしでも戸籍変更が可能」だが、一律ではない、というのが現状です。
法律や司法判断は今後さらに動く可能性があります。ご自身の手続きを検討される際は、必ず最新の情報を、家庭裁判所や弁護士・行政書士などの専門家にご確認ください。タイでのSRSや診断書に関するご相談は、当センターのLINE・お問い合わせ窓口でも承っています。
参考資料・出典
- 最高裁判所大法廷 2023年10月25日決定(生殖不能要件を違憲と判断)
- 広島高裁 2024年7月10日 差戻審決定(手術なしの性別変更を認める/外観要件は違憲の疑い)
- 札幌家裁 2025年9月19日付 審判(外観要件を違憲・無効)
- 東京高裁 2025年10月31日付決定(外観要件の適用は違憲/高裁として初)
- 非婚要件をめぐる特別抗告(最高裁係属中・2026年5月に要請行動)
こんにちは。SRS(性転換/性別適合手術)、顔の女性化そして声の女性化の経験者であり、岡山県出身の加地 茜(あかね)です。趣味は映画鑑賞、好きな動物はカエルです。 相談できるところが少ないSRSや顔の女性化、声の女性化に関してのご相談、そして様々な情報が溢れている現状で何を信じて良いのかわからないなどの困り事があればお気軽に相談して下さい。 自身の手術経験やアテンド経験から、痒いところに手が届く様なサポートが出来るよう、日々努力しています!








