【2026年版】タイと日本、SRSはどう違う?費用・待ち時間・保険・症例数で比べてみた

記者:

JWC 加地

2026年7月6日

 

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【結論】2026年7月時点:「安さ・待ち時間」ならタイ、「渡航なしの安心」なら国内。ただし一概には言えません

まず、多くの方がいちばん知りたい点からお答えします。

2026年7月現在、タイと日本のSRS(性別適合手術。以下SRS)は、ざっくり次のように整理できます。

  • 費用:手術費だけならタイの方が安い傾向。ただし渡航・滞在費が加わり、近年は円安で円換算額が上がっているため、差は以前より縮まっています。
  • 待ち時間・症例数:タイは症例数・専門医が多く、比較的短い待機で受けやすい。日本は施設・執刀医が限られ、数か月〜年単位の待機が生じることがあります。
  • 保険:日本は2018年からSRSが公的医療保険の対象。ただし多くの当事者が「保険が使えない」実態があり(後述)、その点を確認せずに「日本は保険が効くから安い」と考えるのは早計です。
  • 国内で受けられる施設:2024〜2026年にかけて増加中で、「日本では受けられない」は過去の話になりつつあります。

どちらが「正解」ということはありません。ご自身が何を優先するか(費用/待ち時間/渡航の可否/術後の通いやすさ)で答えは変わります。この記事では、優劣を断定せず、判断材料を5つの軸で並べていきます。

ひと目で比較:タイ vs 日本(2026年7月時点)

比較軸 タイ 日本
手術費用(MTF造膣) 造膣を伴う術式でおおむね33万〜42万バーツ前後(約1,623,600〜2,066,400円。造膣なしは27.5万バーツ前後=約1,353,000円)※病院・術式で差/円換算はショートコードで表示時点のレートに自動追随 自費の場合、造膣を伴う手術でおおむね150万〜250万円程度(施設・術式による)/保険適用なら自己負担は原則3割だが条件あり(後述)
渡航・滞在費 別途必要(航空券・宿泊・滞在期間分) 基本的に不要
待ち時間・症例数 症例数・専門医が多く比較的短め 施設・執刀医が限られ、待機が生じやすい
保険 対象外(全額自費) 2018年〜対象。ただし混合診療の壁で実際は自費になる人が多い(後述)
術後の通院・修正対応 再渡航が必要になる場合がある 国内で通いやすい(実施施設が近ければ)

※金額は2026年7月時点の目安です。タイ側は病院・術式・アテンド内容で異なるため、最新は thaisrs.com/price で記載時点とあわせてご確認ください。

① 費用と為替:バーツ建て価格は横ばい、上がっているのは「円安」

タイのSRS費用は、バーツ建てで見ると10年以上ほぼ横ばいです。それでも「タイは高くなった」と感じるのは、主に円安が理由です。

  • 2022年頃は 1バーツ=約3.8円 でしたが、2025〜2026年は 1バーツ=約4.7円前後 で推移しています。同じバーツ建て価格でも、円換算額は2割以上増えている計算になります。
  • MTFの造膣手術は術式によって幅があり、たとえば陰嚢皮膚移植法で33万バーツ前後(約1,623,600円)、S字結腸法(開腹)で42万バーツ前後(約2,066,400円)、造膣を伴わない手術で27.5万バーツ前後(約1,353,000円)、といった価格帯が一例です(2025年3月改定の一例。病院・プランにより異なります。円換算はショートコードにより表示時点のレートへ自動追随します)。

一方、日本国内で保険が使えず自費となる場合、造膣を伴うMTF手術の費用は施設・術式によりおおむね150万〜250万円程度とされます。たとえば山梨大学医学部附属病院(形成外科)が公表している自費(保険適用外)の目安では、造膣・除睾を伴うMTFの外陰女性化手術で約170万円(入院費・手術費を含む/約2週間の入院。術前検査費は別途)とされています。金額は施設・術式・付随処置で大きく変わるため、必ず各施設の最新の公表値をご確認ください。

ここで大切なのは、タイは手術費に加えて渡航費・滞在費がかかるという点です。手術費単体ではタイが安くても、渡航費・滞在期間・為替を含めた「総額」で比べると、術式次第では差が縮まることがあります。円換算は変動するため、検討時点の為替で総額を試算することをおすすめします。円安時代の資金準備の工夫は、当センターのWiseを活用した費用節約術の記事もあわせてご覧ください。

② 待ち時間・症例数:タイは「数の多さ」、日本は「施設の少なさ」

SRSは、執刀できる医師と施設の数が結果に直結する分野です。

  • タイは、長年にわたり世界中から患者が集まってきた実績があり、専門的にSRSを手がける病院・医師が複数あります。症例数が多く、比較的短い待機で予約が取りやすい傾向です。
  • 日本は、SRSを実施できる施設・執刀医がまだ限られており、時期や施設によっては待機が生じることがあります。たとえば山梨大学医学部附属病院は、現在混み合っているため手術予約の時点から約7ヶ月程度の待機になっていると公表しています(2026年7月時点の同院公表値)。待機の長さは施設・時期によって大きく変わるため、「日本は一律に数年待ち」と決めつけず、受けたい施設の最新の状況を直接確認するのが確実です。

「症例数が多い=必ず結果が良い」と単純に言えるものではありませんが、待機期間の短さや予約の取りやすさは、タイを選ぶ理由としてよく挙げられます。

③ 保険適用と「混合診療の壁」:日本は保険が効くのに、なぜ自費になる人が多い?

「日本はSRSに保険が効くから安いのでは?」という疑問はとても多いのですが、ここには注意が必要です。

日本では 2018年4月にSRSが公的医療保険の対象になりました。しかし、実際に保険が適用されるケースは当初ごくわずかでした。GID学会(当時)のまとめでは、保険適用の開始から1年間で、認定施設で実施された約40件のうち、保険が適用されたのは4件(約1割)にとどまったと報じられています。しかもこの4件は、報道によればいずれも比較的高齢で、すでにホルモン療法を必要としない(受けていない)など、混合診療に当たらない例外的なケースだったと伝えられています(日本経済新聞・2019年)。裏を返せば、ホルモン療法を受けてきた大多数の当事者にとっては、保険が使いにくい制度だったということです。

その主な理由が、混合診療の問題です。

  • 多くの当事者は、SRSの前段階としてホルモン療法を受けています。
  • このホルモン療法は保険外(自費)の扱いです。
  • 日本では、保険診療と自費診療を併用する「混合診療」が原則認められておらず、併用すると手術も含めて全額自己負担になってしまいます。

つまり、制度としては保険の対象でも、先にホルモン療法(自費)を受けている人は、実際には手術も自費になりやすい——これが「保険が効くのに使えない」と言われる背景です。実際、後述の富山大学附属病院でも、保険適用での手術は「ホルモン治療を行っていない」等の条件下で可能とされています。

④ 国内で受けられる施設は増えている:「日本では受けられない」は過去の話に

かつては「国内でSRSを受けられる施設はほとんどない」と言われてきましたが、状況は変わりつつあります。

  • 保険適用で治療を行える日本GI(性別不合)学会の認定施設は、少しずつ増えています。
  • 富山大学附属病院のジェンダーセンターは、2024年9月に同学会の9番目の認定施設として承認され、2024年10月から一定の条件下で保険適用の手術が可能になりました。
  • さらに同院は、2026年3月16日、北陸で初めてMTFのSRSに成功したと発表しました。実際に性別適合手術を実施した施設としては国内6施設目にあたります。

ここで混同しやすいのが、「学会の認定施設の数」と「実際に手術を実施した施設の数」は別の数え方だという点です(富山大の例では、認定は9番目・実施は6施設目)。数字を見るときは、どちらの意味かに注意してください。最新の認定施設数は日本GI(性別不合)学会の公式情報でご確認いただくのが確実です。

いずれにせよ、国内でSRSを受けられる選択肢は着実に広がっています。「渡航せずに、通いやすい国内で受けたい」という方には朗報と言えます。

⑤ 術式・アフターケア:どちらが優れているかではなく、「通いやすさ」の違い

術式(陰嚢皮膚移植法・S字結腸法など)そのものは、タイでも日本でも用いられており、どちらの国が医学的に優れていると断定できるものではありません。仕上がりや合併症のリスクは、国よりも執刀医の技量・個々の状態・術後のケアによって変わります。

現実的に差が出やすいのは、アフターケアの通いやすさです。

  • タイ:術後の経過観察やダイレーション(拡張)の指導は現地で受けますが、帰国後に修正・再手術が必要になった場合、再渡航が必要になることがあります(日本で受けた手術の修正をタイで相談したい場合は、こちらの記事もご参照ください)。
  • 日本:実施施設が近ければ、術後の通院・トラブル対応を国内で受けやすいのが利点です。

どちらを重視するかは、お住まいの地域・仕事や家庭の事情・費用のかけ方によって変わります。

FtM(女性→男性)とMtF(男性→女性)で事情は違う?

変更の方向によっても、選び方の力点は変わります(あくまで一般的な傾向です)。

  • FtM(女性→男性):乳房切除・子宮卵巣摘出・陰茎形成など、段階の多い手術になりがちです。国内でも乳房切除などは受けやすくなってきていますが、陰茎形成のような専門性の高い術式はタイの症例数が参考にされることがあります。
  • MtF(男性→女性):造膣術(陰嚢皮膚移植法・S字結腸法など)が中心で、術式・費用の比較がしやすい領域です。上で紹介した費用の目安もMTFのものです。

いずれの場合も、「どこで受けるか」より前に「自分がどの手術を、いつ望むのか」を整理することが出発点になります。

タイでのSRSを検討している方への影響

タイでのSRSを検討されている方にとって、今の状況は次のように整理できます。

  1. 「国内では受けられないからタイへ」という理由は、以前より当てはまりにくくなっています。 国内の実施施設が増えているためです。それでも、待ち時間の短さ・症例数・費用(渡航費・為替を含めた総額)を理由にタイを選ぶ方は依然として多くいます。
  2. 「日本は保険が効くから安い」は、鵜呑みにしないでください。 混合診療の壁で、実際には自費になる方が少なくありません。ご自身のケースで保険が使えるかどうかの確認が先です。
  3. 費用は為替で動きます。 検討時点の為替で「手術費+渡航・滞在費」の総額を試算し、国内の自費・保険適用の見込みと並べて比べるのが確実です。

つまり、「タイか日本か」を金額の一点だけで決めないことが、これまで以上に大切になっています。ご自身の条件での費用・術式・スケジュールの相談は、当センターの窓口でも承っています。

まとめ:優劣ではなく「自分の優先順位」で選ぶ

  • 費用(手術費単体)・待ち時間・症例数を重視するなら、タイに強みがあります。ただし円安と渡航費で総額の差は縮まっています。
  • 渡航なしの安心・術後の通いやすさを重視するなら、国内の選択肢が広がっています(実施施設は2026年3月時点で国内6施設目まで)。
  • 日本の保険は「対象=実際に使える」ではない点(混合診療の壁)に注意。
  • どちらの国が医学的に優れているという断定はできません。執刀医・個々の状態・術後ケアで結果は変わります。

費用・制度・施設の状況は今後も動きます。ご自身の手続きや費用を検討される際は、必ず最新の情報を、各医療機関や当センターにご確認ください。タイでのSRS・費用・診断書に関するご相談は、当センターのLINE・お問い合わせ窓口で承っています。

参照した主な一次・報道ソース

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