【2026年更新】前外側大腿皮弁+ミニ前腕皮弁による陰茎形成のQ&A――症例数・ドナー部位・渡航回数
記者:
横須賀 武彦
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2013年6月22日
4,104

【 ご質問 】
ガモン病院の陰茎形成術について、「前外側大腿皮弁+ミニ前腕皮弁」という選択肢があることを知り、興味を持ちました。病院のホームページにも目を通しましたが、症例数や術後の経過、渡航回数、ドナー部位の選び方など、確認しておきたい点がいくつかあります。
【まず結論】現在のガモン病院の陰茎形成は3術式が基本。この記事の組み合わせ術式も選択可能です
ガモン病院が公式サイトで案内している陰茎形成の基本術式は、2026年3月更新時点(kamolhospital.com「Phalloplasty」ページ)で3種類です──①前外側大腿皮弁(ALT flap)、②前腕皮弁、③腓骨付き下腿皮弁。この記事で扱う「前外側大腿皮弁+ミニ前腕皮弁」の組み合わせは、この3術式そのものではなく、2012年当時に導入された、①と②を組み合わせる特定の術式です。
この組み合わせ術式も、2026年時点でガモン病院の正式なメニュー(後述のステップ2の選択肢のひとつ)として案内されており、廃止されたわけではありません。ガモン病院自身のギャラリーページでも「ALT-phalloplasty」として症例写真を公開しており、前外側大腿皮弁で陰茎形成すると陰茎がかなり大きくなるのですか?というFAQでも紹介されているとおり、大きさを事前に指定できる術式として案内が続いています。
ガモン病院では、この組み合わせ(前外側大腿皮弁+前腕皮弁)だけを取り出した症例統計は取っていません。ただし、陰茎形成のステップ2(術式を問わず、いずれかの皮弁法で陰茎本体を形成する段階)に進む日本人患者は、年間でおおむね3件前後とのことです。この中に本術式を選ぶ方も含まれますが、術式別の内訳までは分からないため、この組み合わせに限った件数はお答えできません。以下のQ&Aでは、原文の内容を踏まえつつ、現時点で確認できている事実を整理します。
現在のステップ構成と費用の目安(手術費用のみ・総額ではありません)
この術式は、原文にもあるとおり複数ステップに分かれています。現在の料金案内に基づく構成は次のとおりです(手術費用のみで、滞在費・アテンド料金・航空券等は別途です)。
- ステップ1(膣閉鎖+尿道延長+尿道形成): 手術費用の目安 2,208,190円(入院3日/タイ滞在目安21日)
- ステップ2(前外側大腿皮弁による陰茎形成+前腕皮弁による尿管形成): 手術費用の目安 3,113,500円(入院14日/タイ滞在目安45日)
- ステップ3(形状修正と尿道接続): 手術費用の目安 670,600円(入院5日/タイ滞在目安14日)
- ステップ4(睾丸インプラント挿入): 手術費用の目安 905,310円(入院2日/タイ滞在目安14日)
ここでいう「ミニ前腕皮弁」とは、前腕の皮膚を尿道の形成だけに使う小さな皮弁を指し、前腕の皮膚だけで陰茎全体を形成する「前腕皮弁法による陰茎形成」(別のステップ2の選択肢)とは異なる術式です。似た名称の術式が複数あるため、この記事では常に「前外側大腿皮弁+前腕皮弁」の組み合わせについて説明しています。
なお、原文ではステップ2に「尿管接続」の作業が含まれていましたが、現在の料金案内ではステップ3(形状修正と尿道接続)に尿道接続の作業が含まれる形になっています。これは運用が変わったわけではなく、尿道接続の作業がどのステップに含まれるかは、実施する術式(皮弁の組み合わせ)によって異なるためで、原文と現在の表記の違いはこの標準的な違いによるものです。
質問と回答
原文の①〜⑥の質問にそって、現時点でわかっていることを整理します。
①症例数・実施実績と、他院での採用状況は?
2012年9月に初めて実施されたという時期の情報自体は変わりません。ただし「症例はまだ1例のみ」という部分は2013年当時のものです。前述のとおり、ガモン病院ではこの組み合わせ単独の統計は取っておらず、陰茎形成ステップ2全体(術式を問わない)で年間3件前後の日本人患者が進んでいるとのことです。個別の術後経過(排尿等)についても術式別の統計はないため、この記事では後述する海外文献の情報を参考としてご紹介します。
「他国での採用状況」について、原文(2013年)では「タイではガモン病院のみ、他国ではオランダで実施されている」と案内していました。当社の調査では、オランダの医療機関(Gender Surgery Amsterdam)が前外側大腿皮弁と前腕遊離皮弁を組み合わせた術式について、2008〜2015年の19例をまとめた症例報告を2017年に発表しているほか(van der Sluis et al., 2017)、2023年には韓国・翰林大学江東聖心病院(Hallym University Kangdong Sacred Heart Hospital)からも、同じ組み合わせの術式による2例の症例報告が発表されています。学術文献で確認できる範囲では、オランダと韓国の複数国で同様の術式が報告されており、これ以外にも非公表で実施している医療機関がある可能性は否定できません。
②睾丸インプラント・陰茎インプラントに万一のことがあっても、日常生活は送れますか?
インプラントを入れていない状態でも、排尿など日常生活を送ること自体は行えます。これは原文どおりで、構造上の理由による部分のため、現在も変わりません。
陰茎インプラントについては、現在は執刀医の判断が必須となっており、以前のように希望すれば行うという形では積極的に実施されていません。陰茎の血流障害・壊死などのリスクを避けるための方針で、ガモン病院の公式サイトでも神経機能の回復を待つ1〜2年後に慎重に検討するとされており、この方針と整合します。現在の料金案内でもステップ4は「睾丸インプラント挿入」のみで、陰茎インプラントは含まれていません。ご希望の場合は、渡航前の診察の中で執刀医に適応を確認していただく流れになります。
なお、タイでの睾丸インプラントの入手性については、「入手できない」という誤情報がインターネット上で広まった時期がありましたが、タイでは睾丸インプラントが入手できないそうですが?でも触れているとおり、医療機関によって状況は異なります。
③大腿部のドナー(皮膚の採取元)は、どこから採りますか?
原文の回答では、反対側の大腿部、またはドナー部位と同じ側の脚の使われていない大腿部の皮膚を使用できるとされていました。ガモン病院公式サイトの該当ページ(kamolhospital.com「Phalloplasty」)を確認したところ、この術式は太もも側の傷を目立ちにくくできる点が利点として説明されていますが、反対側と同側のどちらを選ぶかという具体的な基準までは明記されていませんでした。原文の説明はこの公式情報と矛盾するものではなく、実際にどちらの部位を使うかは、体格や手術計画によって執刀医が個別に判断するという理解で差し支えありません。
④ステップごとに、計4回渡航する必要がありますか?
完成度を追求すると、上記「現在のステップ構成」の4ステップすべてを行うことになり、その場合は原文どおり4回の渡航が必要になります。それぞれの入院日数・タイ滞在目安日数は次のとおりです。
- ステップ1(膣閉鎖+尿道延長+尿道形成): 入院3日・タイ滞在目安21日
- ステップ2(前外側大腿皮弁による陰茎形成+前腕皮弁による尿管形成): 入院14日・タイ滞在目安45日
- ステップ3(形状修正と尿道接続): 入院5日・タイ滞在目安14日
- ステップ4(睾丸インプラント挿入): 入院2日・タイ滞在目安14日
どこまでのステップを行うかは、ご本人の希望と執刀医の診察による判断次第です。ステップを一部省略できるかどうかも含め、具体的な計画は執刀医との相談が前提になります。
⑤尿道用のチューブを前腕に埋め込んで育てる必要はありますか?
この術式では必要ありません。通常の前腕皮弁単独での陰茎形成では、尿道の部分を先に前腕に埋め込んで一定期間育てる工程が必要になることがありますが、この術式では前腕皮弁を尿道形成だけに使うため、そうした事前の埋め込み・育成の工程が不要になります。
⑥前腕は内側、大腿は外側の皮膚を使うのはなぜですか?
ガモン病院の説明では、前腕は内側に、大腿部は外側に、それぞれ手術に適した血管が通っているためとのことです。これは血管の解剖学的な位置に関する病院側の説明であり、詳細な医学的根拠までは原文の時点でも示されていません。個別の術式選択における解剖学的な適否は、実際の診察の中で執刀医に確認することをお勧めします。
海外の文献から見えてきたこと
前外側大腿皮弁と前腕皮弁を組み合わせるこの術式(Double flap phalloplasty)は、2017年のオランダの症例報告(19例)に加え、2023年には韓国・翰林大学江東聖心病院からも2例の症例報告が発表されており、少なくとも複数の国で実施・報告されていることが確認できます。
オランダの症例報告では、長期的な尿路系の合併症(主に尿道狭窄)が19例中10例(約53%)に生じたことが示されています。ただし、この報告は前外側大腿皮弁と前腕皮弁を1回の手術内でまとめて行う一期的手術(one-stage)の症例をまとめたものであり、ガモン病院のように複数回に分けて段階的に行う手術方法とは異なります。この数字はガモン病院での実績を示すものではなく、海外の別の医療機関・別の手術方法による症例報告である点にご留意ください。術式ごとの合併症の起こりやすさや、ガモン病院での現在の実績については個人差もあり、当社が断定できるものではありません。検討される場合は、ガモン病院の執刀医に、この術式の現在の実施件数や合併症の傾向について直接確認されることをお勧めします。
タイでのSRSを検討中の方へ
前外側大腿皮弁+前腕皮弁による陰茎形成は、前腕皮弁単独や下腿腓骨付き皮弁など(陰茎形成(前腕皮弁法または下腿皮弁法)料金の改定も参考)と並ぶ選択肢のひとつです。前腕の傷跡を目立たせたくない、といった理由でこの術式を選ぶ方がいる一方、複数の皮弁を組み合わせることで手術・回復の複雑さが増す面もあります。どの術式が向いているかは、ご本人の希望・体格・仕事や生活での傷跡の見え方への配慮など、個別の事情によって変わるため、執刀医との診察の中で相談しながら決めていくことをお勧めします。
ご相談の窓口――内容に応じて専門家におつなぎします
- 術式の選択・症例数や合併症の傾向・ドナー部位の判断など(医療判断) … 執刀医・医療スタッフへおつなぎ・ご確認いただきます。
- 渡航スケジュール・費用の確認・手配など(私たちの実務範囲) … 弊社スタッフ・LINE相談窓口へ。ご渡航前でもお気軽にどうぞ。
- 戸籍の変更・法的な手続き … 弁護士・行政書士・家庭裁判所など、専門家へのご相談をご案内します。
バンコク在住、(株)ジェイ・ウェッブ・クリエーション代表。1997年にバンコクへ移住し、現地工場長を経て2004年に会社設立。現在はバンコクで医療系の情報提供と起業支援を中心に活動中。日本国内で年に2回ほど個別相談会も開催しています。1952年生まれで茨城県水戸市出身、在タイ20年超










