ココが気になるタイSRS「VIOライン(会陰)の脱毛は必要ですか?」
記者:
JWC 加地
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2019年1月16日
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MtF SRS前に脱毛は必要なのか?
絶対条件ではありませんが、できれば下の図で緑色線内の範囲(IラインとOラインの一部)は永久脱毛をお勧めします。
理由は手術後に、膣の入り口2cm前後の部分(膣内ではありません)に発毛して違和感が出る可能性があるからです。
なお、膣内部は手術時に適切な処置を施しますので、事前の脱毛の有無によらず膣内から発毛することはありません。
この点が気にならなければ脱毛する必要はありません。これ以外の部分は術後でも脱毛は可能です。
また発毛は最初は気になっても、ホルモン治療を継続していきますと、徐々に発毛する毛の太さが減少していくのが普通です。
なお、スポーン・クリニックでは、事前脱毛しないように指導していますので、ご注意ください。
脱毛は手術までに完了させる必要がある?
脱毛するかどうかは手術要件にはありませんので、術前に脱毛するかどうかは個人の判断ということになります。
もし、脱毛する場合は術前2ヶ月前までに脱毛を「終える」または脱毛を「一旦中止」して皮膚の回復を待つ必要があります。
特に脱毛が推奨される方は、発毛が非常に多く毛で皮膚が見えないほどのレベルの方に限ります。
この点をご自身で判断できれば良いのですが、もし写真を送っていただけましたら確認をさせていただきます。
これ以外の部位は術後でも脱毛できるので、問題ないと思います。
過度な脱毛に関する注意
ここまで読んで 「それなら思い切って全部ツルツルにしちゃえば清潔で楽そう!」と考えた方――ちょっと待ってください。 陰毛には ①下着や皮膚どうしの摩擦を和らげるクッション ②外陰部の温度・湿度を適度に調整して雑菌の繁殖を抑える通気層 ③細菌やウイルスが皮膚に直接触れるのを減らすバリア——という生理的役割があります。近年の研究でも陰毛を完全に除去した人の約60%が埋没毛・毛嚢炎・接触性皮膚炎など何らかのトラブルを経験したと報告されており、必ずしも「無毛=より清潔」というわけではありません。
とくに SRS 直後の外陰部は、瘢痕(きずあと)や神経過敏が残りやすく、乾燥・摩擦・蒸れの三拍子がそろうと軽い刺激でも赤みやヒリヒリ感を招きやすい状態です。陰毛を過度に処理してしまうと、
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摩擦増加──毛がないぶん下着とのこすれが直に伝わり、痛みや色素沈着の原因に。
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蒸れやすさ──通気層が失われ汗がこもり、真菌や細菌が繁殖しやすい高湿環境に。
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感染リスク──カミソリ負けや脱毛機器の熱ダメージで生じた微小な傷から毛嚢炎・外陰ヘルペスなどが起きる可能性。
こうした合併症は、いずれも術後の傷の治癒を遅らせるだけでなく、追加の治療費や通院負担につながりかねません。さらに、美容面でも陰毛が残っていたほうが傷跡や色むらを自然に覆い隠してくれるため、仕上がりの見映えが良くなるケースが多いのです。
したがって「緑色で示した I ライン+O ライン一部のみを永久脱毛し、それ以外は必要に応じて軽くトリミングで整える」程度が医学的にも審美的にもバランス良好といえます。どうしても広範囲の脱毛を希望する場合は、①術後の創部が完全に落ち着いてから ②皮膚科または担当外科医と相談し、医療レーザーなど安全性の高い方法で少しずつ行うことを強くおすすめします。