【2026年更新】タイの水は硬水と聞きましたが、術後に飲んでも大丈夫でしょうか?
記者:
横須賀 武彦
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2014年5月2日
4,198

【 ご質問 】
タイの水は硬水と聞きましたが、術後に飲んでも大丈夫でしょうか?
【まず結論】ボトル入りの飲料水は「硬水」ではありません
タイで密封ボトルに詰めて販売される飲料水は、タイの法令で総硬度100mg/L以下と定められています。WHO(世界保健機関)の分類では「軟水」から「中硬水」にあたる範囲で、硬水(120mg/L超)には入りません。バンコクで市販のボトル水を分析した研究でも、精製水タイプの硬度は26〜118mg/Lでした。硬さを理由に、術後の水分補給をためらう必要はありません。
術後の滞在で気をつけていただきたいのは、水の硬さよりも衛生です。屋台の氷や、水道の蛇口から直接くんだ水は、体調を崩す原因になることがあります。以下、順にご説明します。
「タイの水は硬水」と言われるのはなぜ?
この言い方が指しているのは、多くの場合水道水です。バンコクの水道水は日本の水道水よりミネラルがやや多く、洗濯物のごわつきや石けんの泡立ちの悪さとして違いが表れます。弊社の宿泊先で洗濯洗剤をタイの水質に合ったものでご用意しているのも、この差があるためです(日本の洗剤とタイの水の相性については「日本の洗剤をタイの硬水でも使えるかどうかP&Gグループお客様相談室に聞いてみました」でご紹介しています)。
一方、飲むために売られている水は、水道水とは別に処理された製品です。工場で不純物とミネラルを取り除く工程を経るため、硬度は水道水と同じか、それより低いものが多くなります。「タイの水は硬い」という体感が、そのままボトルの飲料水に当てはまるわけではありません。
数字で見る、タイの水の硬さ
硬度は「水1リットルに溶けているカルシウムとマグネシウムを、炭酸カルシウムの量に換算した値(mg/L)」です。WHOは次のように分類しています。
| 硬度(mg/L) | WHOの分類 |
|---|---|
| 60未満 | 軟水 |
| 60〜120 | 中硬水 |
| 120〜180 | 硬水 |
| 180超 | 超硬水 |
この物差しを当てると、タイの水は次の位置に収まります。ボトル入りの水の数値は、バンコクなどで市販されている製品を大学の研究室が分析した結果です。
| 水の種類 | 硬度(mg/L) | WHOの分類 |
|---|---|---|
| 東京都の水道水(蛇口での平均) | 約60 | 軟水と中硬水の境目 |
| バンコクの水道水(2地点の分析値) | 77・102 | 中硬水 |
| タイのボトル入り飲料水(精製水タイプ3銘柄) | 26・26・118 | 軟水〜中硬水 |
| タイのミネラルウォーター(3銘柄) | 26・122・210 | 軟水〜超硬水(銘柄差が大きい) |
| 輸入ミネラルウォーター(欧州産2銘柄) | 252・350 | 超硬水 |
タイの水道水は、日本の水道水より少し硬い「中硬水」の水準です。ヨーロッパの水に多い硬水とは、硬さの桁が違います。そして表のいちばん下、タイの店で手に入る水のなかでもっとも硬いのは、欧州から輸入されたミネラルウォーターでした。「輸入品のほうがやわらかい水」とは限りません。
硬い水を飲むと、お腹が緩くなりますか?
水のミネラルとお腹の関係について、WHOは「マグネシウムと硫酸塩がそれぞれ1リットルあたり250mg程度を超えて含まれる水には緩下作用がありうる」と説明しています。タイの密封ボトル入り飲料水は、法令で総硬度100mg/L以下・硫酸塩250mg/L以下と決められており、この水準には届きません。お腹の調子が変わったときの原因を、水の硬さに求める必要はありません。
実際には、渡航後の数日間はお腹が緩くなる方がときどきいらっしゃいます。多くは数日で落ち着き、その後は同じご相談はほとんどありません。考えられる原因は、水の硬さ以外のところにあることが多いものです。
- 処方されたお薬の影響:抗生物質や痛み止めで、吐き気やお腹の症状が出ることがあります(「入院中に起こり得る体調の変化や問題」もご覧ください)。
- 慣れない食事:辛味や油の多い料理、普段より少ない・多い食事量。
- 氷や生水からの食あたり:後述のとおり、こちらのほうが現実的なリスクです。
- 冷たい飲み物の摂りすぎ:暑さでつい冷たいものが増えます。
症状が続く場合や、発熱・強い痛みがある場合はご連絡ください。入院中はナースコール、退院後の滞在中は弊社スタッフ・LINE窓口へご連絡いただければ、受診の手配まで対応します。市販の下痢止めは自己判断で服用せず、医師・薬剤師にご確認ください。
術後に本当に気をつけたいのは「生水」と「氷」
厚生労働省検疫所(FORTH)は、海外渡航時の飲み水について「ボトル入りの水が最も安全(ふたがしっかりとされていることを確認できればベスト)」「氷は生水から作られている可能性があります」と案内しています。術後は体力が落ち、抗生物質でお腹の環境も変わりやすい時期です。この時期の食あたりは、回復のスケジュールにも影響します。
- キャップが未開封のボトルを選び、開けたら早めに飲みきる。
- 氷や屋台の飲み物を禁止しているわけではありません。ただし術後は経過を見ながら、お腹を壊しても患部に影響が出ない時期に入ってからのご案内としています。時期の判断は担当スタッフにご確認ください。カット済みフルーツの扱いも含めて、「術後の身体にやさしい?タイフルーツの楽しみ方」で詳しくご紹介しています。
- 街中のコイン式給水機の水は安価ですが、水質のばらつきや衛生管理の差が報告されています。術後の滞在中は、病院支給の水や弊社がお渡しする密封ボトルをお使いください。
- 気になる方は歯磨きのすすぎもボトルの水で。
水は煮沸したほうがよいですか?
水道水を飲む場面では、煮沸に意味があります。FORTHも、水道水しかない場合は最低1分間しっかり沸騰させるよう案内しています。これは消毒のための手順です。当社でも、水道水を飲用にする場合は衛生面から煮沸してお使いいただくようご案内しています。
ただし、煮沸で減るのは炭酸塩に由来する硬度(一時硬度)だけです。加熱すると炭酸カルシウムが固まってやかんの底に沈む一方、硫酸塩などに由来する硬度(永久硬度)はそのまま残ります。煮沸は「軟水にする方法」ではありません。
密封ボトルの飲料水は、そのまま飲めるように処理・検査された製品です。硬さのために沸かす必要はありません。
滞在中の飲み水はどう用意しますか?
入院中、病室での飲み水は病院から支給されます。タイで一般に流通している密封ボトル入りの飲料水です。
退院後に過ごしていただく「コンドータウン」では、飲料水を宿泊料金に含めてお部屋に補充しています(500mlボトルを1日4本=2リットルが目安)。足りないときは1階のセブンイレブンで買い足せます。備品や消耗品の全体像は「コンドータウン」の備品・消耗品まとめにまとめてあります。
タイは日本より汗をかきます。冷房の効いた病室でも、乾燥と発汗で水分は失われていきます。喉が渇く前にこまめに飲むほうが、術後の便通や身体の負担の面でも楽です(滞在中の室温の考え方は「入院中の室温管理と汗疹対策」をご覧ください)。1日にどれくらい飲むかは、術式や術後の経過によって病院から指示が出ることがあります。指示があるときはそちらを優先してください。
「ミネラルウォーター」表示の水は少し事情が違います
タイでは、一般の飲料水(ドリンキングウォーター)と、地下の水源から採るナチュラルミネラルウォーターが別々の規格で管理されています。後者はミネラルを残したまま製品にするため、硬度が高めの銘柄があります。前掲の分析でも、タイのミネラルウォーターは26mg/Lから210mg/Lまで銘柄差がありました。
硬さが気になる方は、コンビニやスーパーで広く売られている一般的な飲料水(ドリンキングウォーター)を選べば十分です。フランス産のボルヴィックは硬度60mg/L前後の軟水で、タイでも輸入食品を扱うスーパーで手に入りますが、価格は現地の水の数倍になります。日本からペットボトルの水を持参する必要はありません(重量の割に消費が早く、機内持ち込みにも制限があります)。
よくある質問
Q. 病院で出される水はどんな水ですか?
A. 病院から支給されます。タイで一般に流通している密封ボトル入りの飲料水で、前述のとおり硬さの面で心配のいらない水準です。
Q. 心配なので日本から水を持っていったほうがいいですか?
A. 必要ありません。滞在中に飲む量を持ち込むのは現実的ではありませんし、現地の飲料水で足ります。荷物は術後の生活に必要なものに使ってください。
Q. お腹が緩くなってしまいました。どうすればよいですか?
A. まず水分をこまめに補ってください。入院中はナースコール、滞在中は弊社スタッフへお知らせいただければ、状況を確認して受診の手配をします。市販の下痢止めを自己判断で飲むと、原因によっては回復を遅らせることがあります。服用中のお薬との関係も含めて、医師・薬剤師にご相談ください。
Q. 白湯を飲みたいのですが、お湯は用意できますか?
A. 弊社の宿泊施設「コンドータウン」および「K’Garden」では電気ケトルをご用意しており、白湯やお茶用のお湯をお使いいただけます。冷たい飲み物でお腹が張る方は、常温のボトル水でも負担は軽くなります。
タイでのSRSを検討中の方へ
「タイの水は硬いらしい」という話は、水道水の性質としては当たっていますが、術後に飲む水の話としては心配のしすぎです。押さえていただきたいのは3点だけです。
- 飲むのは密封ボトルの水。硬度は日本の水道水と大きく変わりません。
- 気をつけるのは硬さより衛生。生水は避け、氷や屋台の飲み物は担当スタッフがご案内するタイミングでお楽しみください。
- 体調の変化は早めに共有。入院中はナースコール、滞在中は弊社スタッフへ。
滞在中の飲食は、回復の快適さに直結します。判断に迷うものがあれば、口にする前にお声がけください。
参照した主な情報源
- タイ保健省告示 第61号(仏暦2524年)「密封容器入り飲料水」 — 総硬度100.0mg/L以下・硫酸塩250.0mg/L以下などの規格 https://wepa-db.net/archive/policies/law/thailand/std_bottled_drinking.htm
- WHO「Hardness in Drinking-water」(WHO/HSE/WSH/10.01/10/Rev/1, 2011) — 硬度の分類、マグネシウムと硫酸塩による緩下作用 https://cdn.who.int/media/docs/default-source/wash-documents/wash-chemicals/hardness-bd.pdf
- Lekskulchai V.「Minerals in drinking water available in Bangkok, Nakhon Nayok, and Chachoengsao」ScienceAsia 41 (2015) 409–413 — 水道水・市販ボトル水の硬度実測値 https://www.scienceasia.org/2015.41.n6/scias41_409.pdf
- 東京都水道局「水の硬度」 — 蛇口での硬度の平均値 https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/suigen/topic/02
- 厚生労働省検疫所 FORTH「食べ物・水にご注意を!」 — 生水・氷・煮沸についての注意 https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/attention03.html










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