【実例】タイでのSRS入院、公的健康保険と生命保険の両方から給付を受けた話
記者:
JWC 加地
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2026年8月23日
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【まず結論】タイでのSRS入院、公的健康保険と生命保険の両方から給付を受けた一例
タイでSRS(性別適合手術)のため入院されたMtFの方から、帰国後の保険金請求の結果について、ご本人の同意を得てご紹介します。このケースでは、協会けんぽの海外療養費として196,945円、大手生命保険会社の医療保険から165,434円(遅延利息込み)の支給を受けています。
協会けんぽの海外療養費——196,945円が支給されるまで
健康保険の「海外療養費」は、海外で医療を受けた場合に、費用の一部が支給される制度です。協会けんぽ(全国健康保険協会)が保険者となる社会保険(被用者保険)のほか、国民健康保険にも同様の制度があります。制度の細部や審査は、保険者ごとに運用されています。
海外療養費には「治療を目的とした渡航は支給対象外」という原則があります。日本国内で治療を受けられるにもかかわらず、治療のために海外へ渡航した場合は、原則として支給の対象になりません。
このケースで支給を受けられたのは、性同一性障害に関する診断と治療のガイドラインに沿った診断・治療であることを示す証明書を、日本国内の医療機関から取得し、申請に添付したためです。申請にあたっては、協会けんぽから次のような注意書きが示されました。
「十分な検査、精神的療法を受けず、本人の意思のみで身体的な治療に及んだものは『療養のため』とすることはできません」
つまり、「性別適合手術を受けた」という事実だけでなく、ガイドラインに基づく検査・診断・治療の過程を経ていることを、書類の上で示す必要があったということです。
提出書類は、家庭裁判所(性別変更の申立て)に提出する書類一式を流用するかたちで受理されました。また、原本のない書類は郵送での受付ができなかったため、電子申請を利用しています。戸籍上の性別変更に関する現行の要件は「【朗報】性別適合手術を受けずに性別変更が可能に!!」で解説していますが、個別の手続きについては弁護士・家庭裁判所・行政書士へご確認ください。
支給額についても、実費がそのまま戻るわけではないことを知っておく必要があります。海外療養費は、タイで実際に支払った金額の一定割合が支給されるのではなく、日本国内で同様の治療を受けた場合の基準額と実際の支払額を比べて低いほうの金額から、自己負担分を差し引いた額が支給される仕組みです(協会けんぽ公式サイトより)。また、申請には時効があり、治療費を支払った日の翌日から2年以内に行う必要があります。
海外療養費の要件や審査の詳細は、加入先の健康保険組合・協会けんぽに個別にご確認ください。
民間医療保険(大手生命保険会社)の給付——165,434円(遅延利息込み)
このケースでは、加入されていた大手生命保険会社の医療保険からも、165,434円(遅延利息込み)の給付を受けています。ご本人の契約は、入院日数に応じてではなく、入院1回あたり15万円が支払われるかたちになっており、これに保険会社側の審査が長引いたことによる遅延利息が加算されて、実際の支給額は165,434円になりました。
民間の医療保険には、海外での入院を保障の対象とする商品がありますが、日本国内の医療法に定める病院と同等であると保険会社が認めた施設での入院であること、など独自の条件があります。詳しくは「入院給付金は海外での入院も保障されますか?」で解説しています。
医療保険の入院給付金には、入院日数に応じて支払われるタイプと、入院1回あたり定額で支払われる「一時金」タイプがあります。今回のケースの契約は、入院1回あたり15万円が支払われる一時金タイプでした。手術給付金の有無を含め、実際に支払われる保険金の内訳・金額は、加入している契約の内容によって異なります。ご自身の契約でどのような給付が受けられるかは、契約している保険会社に個別にご確認ください。
民間の医療保険とSRSの給付の一般的な考え方は、「手術費用が戻ってくる?「入院給付金」と「医療費控除」のヒミツ」でも詳しく解説しています。
この実例からわかること:公的・民間どちらも「治療であることの証明」が鍵になる
このケースを振り返ると、支払われた経路は「協会けんぽ(公的健康保険)」と「生命保険会社(民間の医療保険)」という別々の制度ですが、支給に至った理由には共通点があります。
海外療養費は、治療目的の渡航を原則対象外としながらも、このケースではガイドラインに基づく診断・治療であることの証明を条件に支給されました。民間の医療保険も、一般に「治療を目的とした入院・手術」であることが支払いの条件で、美容目的の手術は対象外とされることが多い保険です。このケースでは、SRSが性同一性障害に対する「治療」として扱われたことが、両方の給付につながっています。
制度としての公的健康保険と、契約としての民間保険は仕組みがまったく異なりますが、「ガイドラインに沿った治療であることを、書類で示せるかどうか」が支払いの分かれ目になるという点は、両方に共通しています。
性別変更に伴う保険契約の実務——保険料と責任準備金の変更
今回のケースでは、契約している生命保険の性別変更手続きに伴い、月々の保険料が5,296円から6,796円に変わり、あわせて責任準備金11,419円が別途必要になりました。
保険契約における性別変更の取り扱いや、それに伴う保険料・責任準備金の扱いは、契約している保険会社・商品によって異なります。ご自身の契約でどのような手続き・費用が生じるかは、契約先の保険会社に個別にご確認ください。
この実例が示すこと、示さないこと
ここまでご紹介した内容は、あくまで1件の実例です。示せることと示せないことを、あらためて整理します。
- 示せること: ガイドラインに基づく診断・治療であることを証明する書類をそろえれば、協会けんぽの海外療養費・民間の医療保険のいずれについても、審査の対象になり得ることが、少なくとも1つの実例として確認できました。
- 示せないこと: 同じ書類を用意すれば同じ金額が支給されることや、どの保険者・保険会社でも同様に審査が通ることは、この実例からは言えません。支給の可否・金額は、加入先や契約内容、個別の審査によって異なります。
申請を検討される場合は、加入している健康保険の保険者(協会けんぽ・健康保険組合・国民健康保険)、および契約している保険会社に、渡航前のできるだけ早い段階でご確認いただくことを強くおすすめします。特に公的健康保険の海外療養費は、ガイドラインに基づく診断・治療の証明書が条件になるため、渡航が決まってから準備を始めるのではなく、検討を始めた早い段階で一度確認しておくと安心です。書類の準備でご不明な点があれば、次にご案内する当社の帰国後サポートやLINE相談も活用してください。
帰国後の書類準備について
保険会社所定の請求書類(入院・手術証明書など)への記入・証明の依頼については、当社でも帰国後の書類準備をサポートしています。具体的な流れは「日本に帰国した後で保険会社に保険金の請求申請をしたいと思いますが・・・」でご案内しています。
保険金請求や書類準備でご不明な点がある方は、LINE通話de相談(無料)からもお気軽にお問い合わせください。
タイでのSRSを検討中の方へ
海外旅行傷害保険・民間の医療保険・公的健康保険(海外療養費)は、対象になる範囲がそれぞれ異なる別の制度です。3種類の違いの全体像は、固定ページ「海外旅行保険について」で整理していますので、あわせてご確認ください。
今回ご紹介したのは、そのうち公的健康保険(海外療養費)と民間の医療保険から実際に給付を受けた1件の実例です。加入している保険の内容や、実際に何が支給対象になるかは、渡航前にご自身で保険者・保険会社に確認しておくことをおすすめします。
よくある質問
海外療養費の申請には期限がありますか?
はい。治療費を支払った日の翌日から2年以内に申請する必要があります。
支給額はどうやって決まりますか?
タイで実際に支払った金額の一定割合が戻るのではなく、日本国内で同様の治療を受けた場合の基準額と実際の支払額を比べて低いほうの金額から、自己負担分を差し引いた額が支給されます。詳しくは加入先の健康保険組合・協会けんぽにご確認ください。
この実例と同じように申請すれば、同じ金額が支給されますか?
支給されるとは限りません。支給の可否・金額は、加入先の保険者や保険会社、契約内容、個別の審査によって異なります。今回の実例は、あくまで1件の参考情報としてご紹介しています。
相談・お問い合わせ
保険金請求の書類準備については、LINE通話de相談(無料)からお気軽にお問い合わせください。
医療保険・生命保険の契約内容や給付の可否については契約先の保険会社へ、公的健康保険の海外療養費については加入先の健康保険組合・協会けんぽへ、それぞれ個別にご確認ください。戸籍上の性別変更に関する法的な手続きについては、弁護士・家庭裁判所・行政書士へご確認ください。
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