最終確認日: 2026-09-26 / 執筆: 加地 茜

このページの対象と、手術を選ぶ順番

このページは、タイでMtFの性別適合手術(SRS)を検討している方に向けて、術式と病院を選ぶ順番をまとめた案内です。最初に決めるのは「膣を作るか(造膣あり)、作らないか(造膣なし)」です。造膣する場合は、陰嚢の皮膚・S状結腸・腹膜など、どの組織で膣を作るかによって術式が分かれます。術式が決まると、その術式を扱う病院、受けるための条件、タイでの滞在日数が絞られます。

どの術式が合うかは、体の状態や希望をもとに執刀医が判断します。このページは、比較の土台として、またご相談前の整理にお使いください。各病院での手順や料金は、それぞれの病院・術式のページでご案内しています。

最初の分岐:膣を作るか、作らないか

MtFのSRSは、外陰部(陰唇・陰核・尿道口など)を形成する点はどの術式も共通で、違いは膣を作るかどうかと、作る場合に何を材料にするかにあります。造膣するかどうかで、術後のケアと滞在日数が大きく変わります。

造膣なし(外陰部のみ形成) 造膣あり
形成するもの 外陰部。膣は作りません 外陰部と膣
術後のダイレーション 不要 必要。膣の深さと広さを保つため、医師の指示に沿って長期間続けます
タイでの滞在 比較的短い 造膣なしより長い(術式・病院により異なります)
検討されることが多い方 経膣での性交を必要としない方、ダイレーションを続けることが難しい方 経膣での性交を希望する方

造膣なしを受けた後に膣を希望する場合は、あらためて造膣の手術(再造膣)が必要です。そのときに使える皮膚が少なくなっている場合があり、方法は残っている組織をもとに医師が判断します(S字結腸法などが検討されます)。

外陰部の手術の前に、睾丸摘出のみを先に受ける方法もあります。ただし、先に睾丸を摘出すると、陰嚢の皮膚を使う造膣で十分な膣の深さを得にくくなる場合があります(ガモン病院の案内)。後で造膣を考えている方は、順番を決める前にご相談ください。

術式の比較(病院を問わない違い)

タイで受けられる主なMtF SRSの術式を、使う組織と術後ケアの違いで並べました。同じ術式名でも、手技の細部や受けられる条件は病院によって異なります。「情報確認日」は、病院からの回答で内容を確認した日です。「-」の病院は、各病院ページの現在の案内に基づいています。表は横にスクロールできます。

術式 主に使用する組織 主な選択条件 腹腔内操作 術後ケア 主な注意点 対応病院 情報確認日
造膣なし(外陰部のみ形成) 陰茎・陰嚢の皮膚など(膣は作らない) 経膣での性交を必要としない方、ダイレーションを避けたい方 なし ダイレーション不要 後から膣を希望する場合は再造膣の手術が別に必要で、使える皮膚が減っていることがある ガモン病院
スポーン・クリニック
ガモン 2026-09-25
スポーン 2026-09-08
陰嚢皮膚移植法 陰嚢の皮膚(植皮して膣壁にする) 陰嚢の皮膚に余裕がある方。膣の深さは陰嚢の皮膚の量に左右される なし 長期のダイレーション 睾丸摘出後などで皮膚が少ないと十分な深さにならないことがある。ダイレーション時に痛みが出やすいことがある ガモン病院
ミラダ病院(鼠径部の皮膚を併用する方法を含む)
ルックスクリニック(「陰茎皮膚併用による陰嚢皮弁法」。皮弁を用いる方法で、植皮とは別の術式)
ガモン 2026-09-25
ルックス 2026-09-02
ミラダ -
S字結腸法(開腹/腹腔鏡) S状結腸(大腸)の一部 陰嚢の皮膚が足りない場合や、過去のSRS後の再造膣など。腸の持病がある場合は選べないことがある あり。開腹は下腹部を切開、腹腔鏡は腹部に小さな穴を数か所開ける ダイレーション。腸由来の分泌物があり、ナプキンなどでの対応が必要になることがある 分泌物やにおいが一定期間続くことがある。まれに帰国後の腸閉塞。腹腔鏡は、高度の肥満や過去の手術による癒着がある場合に行えないことがあり、術後数日は肩の痛みが出ることがある ガモン病院(開腹・腹腔鏡)
ルックスクリニック(開腹・腹腔鏡)
ミラダ病院(開腹)
ガモン 2026-09-25
ルックス 2026-09-02
ミラダ -
陰茎腹膜造膣法(PPV) 腹膜と陰茎の皮膚 腸を切除せずに膣を作る方法。腸の持病などでS字結腸法を選べない場合にも検討される(ガモン病院は2026年8月から対象を限定せずに案内) あり(腹腔鏡。腹部に3〜4か所の小さな傷) 術後1か月ほど固定具を膣内に入れて過ごす。その後もダイレーション 術後ケアの負担が他の造膣術式よりやや重くなる場合がある。高度の肥満や過去の手術による癒着がある場合は行えないことがある ガモン病院 ガモン 2026-09-25
スポーン・テクニック 陰嚢の皮膚(不足する場合は鼠径部の皮膚も)を全層植皮して膣壁に。外陰部はクリニック独自の皮弁法で形成 陰嚢の皮膚が残っていること(陰嚢切除後は他の方法を検討) なし 長期のダイレーション 陰嚢の皮膚が足りない場合、鼠径部に採皮の傷が残ることがある。SRSと他の手術を同じ日に行うことはしていない スポーン・クリニック(スポーン医師は2022年3月に手術から引退し、後継のバンク医師が執刀) スポーン 2026-09-08

バンコク病院は、造膣術として「陰茎皮膚反転法」「直腸S状結腸造膣術」「腹膜造膣術」の3種類を案内しています(病院の公式資料による)。手技の区分が上の表と一致するとは限らないため、表には含めていません。

「反転法」という言葉について

「反転法」は、本来は陰茎の皮膚を内側に反転させて膣壁を作る「陰茎皮膚反転法(ペニス反転法)」を指す呼び方です。ところが日本語の情報では、陰嚢皮膚移植法や造膣なしのSRSまで「反転法」と呼ばれることがあり、同じ言葉で別の手術を指している場合があります。

陰嚢の皮膚を使う方法にも、皮膚を切り離して移植する方法(植皮)と、血流を保ったまま皮膚を移動させる方法(皮弁)があり、別の術式です。病院に相談するときは、「反転法」ではなく各病院の術式名で確認してください。

病院ごとの術式の詳細

術式の手順・条件・料金は、病院ごとのページでご案内しています。

MtF SRSを受けられるタイの病院

弊社のアテンドでMtF SRSをご案内している病院と、各病院が扱う術式です。弊社は各医療機関の全てと正規エージェント契約を結んでいます。「情報確認日」が「-」の病院は、各病院ページの現在の案内に基づいています。

ヨーサガン・クリニック(声・喉仏の手術)とH.H.H.(植毛)はSRSを扱わないため、SRS以外のMtF手術でご案内しています。FtMを含む全病院の一覧はタイのSRS病院一覧(MtF・FtM)をご覧ください。

手術を受けるための条件と必要書類

手術を受けられるかどうかは、病院と執刀医が、健康状態や検査の結果をもとに判断します。条件は病院と術式ごとに異なります。以下はガモン病院の案内です。

  • タイ人精神科医2名によるGID(性同一性障害(性別不合))診断書。日本の医師によるGID診断書・推薦状の持参は任意です(GID診断書・推薦状の準備)
  • ホルモン治療歴が原則12ヶ月以上(国際的なガイドライン・病院の公式基準)。術式により、最低6か月以上で受け入れとなる場合があります。12ヶ月未満の方は事前にご相談ください
  • 20歳以上60歳未満(60歳以上の方はご相談ください)
  • HIV・梅毒が陰性であること
  • 渡航前検診票など

ガモン病院では、BMI(体重kg÷身長m÷身長m)と体重によって、手術費用の加算や手術を受けられない基準が術式ごとに決まっています。

術式(ガモン病院) BMI・体重の基準
造膣なし・陰嚢皮膚移植法 BMI30以上は手術費用30%加算。BMI32以上または体重90kg以上は手術不可
S字結腸法(開腹) BMI26以上または体重80kg以上は手術不可
S字結腸法(腹腔鏡) BMI28超または体重90kg超は手術不可。BMI28以下で体重80kg超90kg以下は手術費用30%加算
陰茎腹膜造膣法(PPV) BMI28超または体重90kg超は手術不可

スポーン・クリニック、ルックスクリニック、ミラダ病院、バンコク病院の条件は、上の病院一覧から各病院のページでご確認ください。

入院日数とタイでの滞在日数

タイでの滞在日数には、手術前の診察・検査、入院、退院後の通院、帰国前の診察までが含まれます。術後の経過によって前後することがあります。

病院・術式 標準のタイ滞在日数 情報確認日
ガモン病院・造膣なし 17日間(入院4泊) 2026-09-25
ガモン病院・陰嚢皮膚移植法 21日間(入院6泊) 2026-09-25
ガモン病院・S字結腸法(開腹・腹腔鏡) 22日間 2026-09-25
ガモン病院・陰茎腹膜造膣法(PPV) 24日間 2026-09-25
スポーン・クリニック・SRS(スポーン・テクニック/造膣なし) 最低24日以上 2026-09-08

ルックスクリニック、ミラダ病院、バンコク病院の日程は、各病院のページでご確認ください。退院後の滞在先は弊社のレンタルマンション「コンドータウン」などをご案内しています。

リスク・合併症と術後のケア

どの術式でも、手術である以上、合併症が起こる可能性があります。主なものは次のとおりで、起こりやすさは術式や体の状態によって異なります。

  • 出血・血腫、傷の感染
  • 移植した皮膚などの一部がうまく定着しない(壊死)
  • 尿道口の腫れなどによる排尿のトラブル
  • まれに、直腸や尿道と膣の間に穴ができる瘻孔(直腸膣瘻・尿道膣瘻)
  • S字結腸法では、帰国後に腸閉塞が起こる可能性

症状と対処の詳しい説明はMtF手術後に起こりうる合併症と対処方法にまとめています。

造膣した場合は、膣の深さと広さを保つためのダイレーション(拡張器を使ったケア)を、医師の指示に沿って長く続けます。頻度や期間は病院と術式によって異なります。やり方と注意点はMtF SRS後のダイレーションについてをご覧ください。

帰国後に出血・発熱・強い痛みなどの症状がある場合、受診や処置の判断は医師が行います。手術を受けた病院の指示を確認し、日本の医療機関を受診してください。帰国後のケアやダイレーションのコツについては、弊社スタッフにもご相談いただけます。修正手術のための再渡航は再渡航・修正手術支援パッケージで、帰国後のケア用品は弊社オンラインショップでご案内しています。

費用の目安

タイでのSRSの費用は、手術費だけでなく、アテンド料金・航空券・入院前後の宿泊費・現地での食費などを合わせた総額で考える必要があります。手術費は病院と術式で異なり、BMIによる加算、滞在の延長、為替レートによっても変わります。

術式・病院ごとの円での総額の目安はタイSRSの費用(円の総額)でご確認いただけます。正式な金額はお見積もりでご案内します。支払いの時期と方法はお支払い方法のご案内をご覧ください。

弊社のアテンドでお手伝いすること

診察・手術・投薬など医療そのものは、病院と医師が行います。弊社は、日本からの渡航と、現地での移動・通訳・生活面を支援します。MtF SRSのアテンドには、主に次の内容が含まれます。

  • 空港送迎、退院後の検診への送迎
  • 通訳(24時間対応。カウンセリング、入院中、退院後)
  • 入院中は、医師の回診時に対面でお見舞い(1〜2時間以内)。それ以外の時間帯はLINE通話・ビデオでサポート
  • 帰国後の患部ケアやダイレーションのコツなどのアドバイス

サポートの全項目と料金はMtFの方向けアテンドプランで、ご相談・ご予約から帰国までの手順は予約から渡航、帰国までの流れでご案内しています。

手術を受けた方の体験談

弊社のアテンドを利用してタイでSRSを受けた方の声と体験談を、お客様の声・体験談に掲載しています。手術後の経過や感じ方には個人差があります。病院・術式を選ぶ際は、体験談とあわせて、このページの比較と医師の説明もご確認ください。

希望する病院・術式が見つからない方や、どの術式が合うか迷っている方は、お問い合わせフォームまたはLINEでのご相談からお気軽にご連絡ください。

このページの情報について

執筆・編集 加地 茜(タイSRSガイドセンター現地日本人スタッフ)
初回公開日 2017-07-03
本文の最終確認日 2026-09-26
病院情報の確認 ガモン病院: 2026-09-25(病院回答)
スポーン・クリニック: 2026-09-08(病院回答)
ルックスクリニック: 2026-09-02(病院回答)

参考・一次情報

当サイトの情報について
当サイトは、タイSRSガイドセンター(J Web Creation Co., Ltd.)が運営する、タイでの性別適合手術のアテンド(予約手配・通訳・渡航生活支援)サービスのご案内です。手術の適応判断・医療行為は、すべて各病院・医師が行います。当社は掲載病院への予約手配を行う立場であり、掲載内容は病院提供の情報・公式資料・当社の支援経験に基づいています。

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